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まわした手


「カクって、見た目より背中広いよね」

「ん?」


ばさっといつも着ている服を着たカクの背中に話しかける。服を着ていたらひょろひょろに見えるカクも、実は意外とガッシリしている。意外とって言ったら失礼か。いや、まぁ事実だしいいか。


「お前今失礼なこと考えたじゃろう」

「人の腹の中読むなし」

「誰も腹の中は読んどらん。顔に出やすいんじゃお前は」

「ピノキオのくせに」

「あ?」

「いいえ、なにも」


真っ黒な笑顔でカクが近寄ってきたから、シーツをひっつかんで逃げる。とりあえずカクが仕事に行くまでトイレに非難しておこうと思ったら、引きずっていたシーツを踏まれた。ビタン、突っ張ったシーツと一緒にうつ伏せに倒れる。その上にカクが座って来て、私は身動きがとれなくなった。くそやろう。


「いっ……!」

「シーツ離せば転ばずにすんだのにのぉ……バカか」

「ふつう、そこ、抱きかかえるとこだろくっそ鼻」

「まだそんな口聞くかぶっとばすぞ」

「ぐっ……どうも申し訳ありません」

「というか、背中なんか大きくてあたりまえじゃろう。ワシ男、お前女」

「素敵な男性は裸の彼女の背中に座ったりなんてしない」

「でも好きじゃろう?」

「くっ、そ……………すき」


急に背中の重みが消えて、やっとどいてくれたかと起きようと思ったら、引っ張り起こされた。そのまま抱きしめられる。


「いつもそう素直ならいいんじゃが」

「素直じゃない私は嫌い?」

「いや………好きじゃ」





まわした手

(あれじゃぞ、ワシら、20cmも差あるぞ)
(………うっそーん)



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