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大人になった少女は笑う




「それでは、これで」

「あぁ。ご苦労だったな」

「いいえ。では、失礼します」



ガタン、社長室の扉が閉められた。彼女がいなくなった部屋は寒く感じる。ンマー、俺の気のせいだろうが。アイツが小せぇ頃から知っている仲だが、最近急に大人びて見えるようになった。書類を届けに来てくれたときのヒールの音だとか、めずらしくつけてる口紅だとか、ちらりと見えたうなじだとか。急に大人の女になったあいつに正直戸惑っている。イスに凭れかかって、知らないうちに溜めていた息を吐き出した。



「ンマー……、10以上下のガキだぞ、相手は……」



先ほどのことを思い出す。失礼しますと言って部屋から出て行こうとしたアイツの腕を無意識のうちに掴みそうになった。引き止めて一体俺は何をしようとしてたんだ。気を紛らわすために眉間を揉んでみたが、まぁ何もかわらない。だめだ、俺に、そんな感情は、ダメだ。




「アイスバーグさん?大丈夫ですか?」



急に聞こえた声に少しびっくりしたが、重ねられたほどよく温かい手に安心して少し笑う。



「ンマー、いつ入ってきたんだ」

「さっきです。お疲れのようだったので、お茶をもって来たら。……目、凝ってるんですか?」

「いや……考え事が、あってな」





大人になった少女は笑う

(いつか結婚、しねェか?)
(……いつか、ですか)







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