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夕暮れ帰り道



「寒い、ね」

「せ、せやなぁ!あはは」


塾からの帰り道を志摩くんと二人であるく。左側にいる志摩くんと目を合わせることができなくて俯きながら歩く。
口では寒いなんていったけど、本当は寒くなんてない。まったくこれっぽっちも寒くないって言ったらそれは嘘になるけど、志摩くんが横に居るってことだけで私の体の中の血液は沸騰しそうだ。
もっと女の子に慣れていると思っていた志摩くんは、付き合ってみると以外とすごく初心だった。私も人のこと言えないけど、見ていて面白いくらい顔が真っ赤だ。あああそんなところも素敵だ。
そんなことを考えていたら余計に顔が熱くなった。
恥ずかしさを隠すように手袋をしていない掌に息を吹きかける。


「はぁ」

「あれ、手袋してへんの?」

「あ、うん……忘れちゃって」


苦笑いをして志摩くんを見たら、志摩くんは立ち止まって自分の手袋をはずしだした。


「え、志摩くん?」

「お、俺の手袋、片方貸すで!」

「でも、志摩くんが寒くなっちゃう」

「ええんやって俺は!平気やって!な?」


目の前に突き出されたミトンみたいな手袋を受け取るのを戸惑っていると、痺れを切らしたらしい志摩くんが私の右手を取った。手袋がはめられる。指の関節一つあまるくらい大きかった。


「あ、りがとう!」

「ええよええよ!……ほんでな、お願いが、あるんやけど」


志摩くんが改まって私と向かい合った。はにかんだような笑顔がかわいい。うなじ辺りを掻きながら志摩くんが右手を出した。


「名前ちゃんも、手袋してないほうの手、寒いやろ?せやから、……、手、つながん?」





右手は志摩くんの手袋、左手は志摩くんの手にとられて帰り道を歩く。会話はない。けど気まずくはない。


「幸せや」

「うん、私も、」


夕暮れ帰り道





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廉造は付き合ったら純情だと思います。
ずっと坊のお供で、彼女はいなかったんじゃ、って思う最近です。
リクエストありがとうございました!








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