いろはにほへと | ナノ
撃ち続けます



扉をぶち破って部屋に入ってきた屍に俺と廉造は半泣きで勝呂の後ろに隠れる。勝呂は俺らの前から動かずにまるで庇うように座ってくれとった。まじ勝呂神。勝呂!勝呂!とか思ってたら、屍がパーンてなった。ほんでびしゃってなった。


「ぎゃあああああ!きたね!うわきたね!まじ勘弁うげえ!!」
「水野お前うっさいわ!」


勝呂が俺を殴るのも気にせず、俺は服とか肌についた体液をごっしごし拭った。俺若干の潔癖症でさあ!なにこの色キモチワルイ!そんな俺とは違い、杜山さんはなんかよくわからん木を部屋いっぱいに出してくれて、屍と俺らの間に木の壁をつくり守ってくれた。木の出所は、こないだ杜山さんが召喚してた緑男の幼生だった。あいつあんなことできるのか。


「うお、すげ、」
「ありがとニーちゃん!……、あれ?くらくらする」
「あ、熱い」


けどみんな屍の体液にやられてしまったらしく、フラフラしてた。屍は中級以上の悪魔だから、少しの体液でも人間には危険だ。男ならまだ体力あるからいいとして、杜山さんは女の子だし、今までスポーツなんかやってなかったろうから、屍の体液にやられるのも時間の問題だろう。そうなったら杜山さんが出してる幼生は消えて、壁がなくなる。そうなったら、やばい。


「どうするよ、まだ杜山さん元気だからええとして、先生戻ってくるまでの三時間、待っとくのは無理じゃろ」
「俺が外に出て囮になる。もし二匹ともついてきたら皆は逃げろ!」


奥村がそう言った。んー、屍は二匹、確か屍はまったくの馬鹿で能無しってわけじゃなかったから、多分一匹は残るだろう。てことは、ここに残ってるやつらで一匹倒さないとだめだろ?つか奥村そんなこと言って大丈夫なん?あーでもこないだのリーパー事件のときは大丈夫だったから、なんとか……んーでも、


「来い!!」
「ちょ、えぇ!?」


とか色々考えてたら、奥村が一人で行ってしまった。あー、またお前は、一人で突っ走る……。


「えー、奥村行っちゃったんじゃけど……」
「……なんてやつや……」
「結局一匹残ってますけどね!」
「あー、もう、あと一匹も倒すしかないじゃろ。杜山さんもそろそろ体力限界そうだし。杜山さんごめんな、もうちょっと我慢してなー」
「水野の言う通りや。詠唱で倒す!!」


カチャ、銃のセーフティーをはずして戦う気満々の俺を杜山さんは少し心配そうな目で見てくれた。大丈夫と笑い返す。一方、廉造と子猫丸とどう倒すかについて話し合っとる勝呂が神木さんに止めていた。まあ、詠唱は始めたら集中狙いされるもんな。


「言うてる場合か!女こないになっとって、男がボケェーッとしとられへんやろ!」
「ひゅー!勝呂おっとこまえ!」
「さすが坊……!男やわ。じゃあ俺は全く覚えとらんので、いざとなったら援護します」
「お前、詠唱騎士志望だろ?覚えとけや使えねーなぁ」
「誠くん殺生や!俺かてやればできるんやで!」
「俺は勝呂の後ろから援護するから、廉造は前でて頑張れ」
「俺が前!?誠くんナイフも持っとるやろ!知っんねんで俺!それで俺と一緒に戦ってぇや!」
「うるせえな適材適所じゃろーがばーか!」
「ちょっと言ってる場合!?来たわよ!!」


木の間から屍の手やら顔やらが覗いてきた。勝呂と子猫丸はまだ詠唱してるし、もう杜山さんは今にも倒れそうだ、奥村のことも気になるし、ああ胃が痛くなってきた。


「胃がキリキリしてきた。えいバーン!」


バン、おおきな音が部屋に響いて、木の間にいる屍の顔に当たった。だけどすぐに傷はふさがって、また屍はこっちに来ようともがきだした。


「あかんやん!」
「俺まだ祓魔師じゃないから対悪魔用の弾持ってねぇの!だから俺じゃ倒せないの!詠唱しかねんだよ!」
「誠くんの役立たず!」
「志摩さん、そんなこと言うたらあきまへん!でも、坊は最後の章に入った……」


今にもこっちに来そうな屍に連続で銃を撃つ。奥村くんどないならはったやろ、子猫丸の言葉に俺は苦笑いする。あー、考えたないなぁ、廉造と子猫丸と三人で話してる間にも、銃を撃つ手は止めない。


「あ、そろそろ弾切れる」


バァン、最後の一発を撃ち終わって、弾を補充しようと撃つのをやめたら、杜山さんが倒れた。


「このタイミング!?」
「杜山さん!」





とうとう杜山さんが倒れてしまいました。





 


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