Je vous aime. | ナノ
だって昔と違うから、
「肩車しよか?」
「い、いや、肩車はちょっとぉ……」
今俺達は本棚の前で二人して難しい顔をして向き合っている。
書庫室について目当ての本を見つけたはいいが、それがまたえらく高いところにあった。
あんな高いとこまで棚作ってどうするんや。
俺が背伸びしてもギリギリ届かない。
ちなみに脚立言う便利なもんはこの間金造のドアホが壊してしもーてない。
肩車はさすがに却下されたんで、もうしゃーない、これしかないやんな。
「ほい」
「はい?」
両手を広げて清に笑いかける。
清は分けのわからいといった顔で頭の上に?を出してる。
改めて説明すんのも恥ずかしいし、俺も他の仕事があるからこれ以上時間かけんのも嫌やし、無理やり清の腰に腕を回し、抱き上げた。
「え!?」
「抱っこしたら届くやろー。ほれ、取った取った」
「あ、あ、これ、と、これ」
しかし、軽いなぁ。
女ってこんなもんか?いや、軽すぎるやろこれは。
あー、ええ匂いするし、俺やっぱ清のこと好きやな。
「あ、の、あった、んで、下ろしてください……」
「え、あぁ、せやな……」
恥ずかしいのか、もうほとんど涙目で俺を見下ろしてくる清に色々堪らなんくなった。
なんやこの生き物、かいらしい。めっちゃかいらしい。
こう、いじめたくなる。
ちらっと壁にかかっている時計を確認したら、まだ時間はあった。
まあ、これ終わったらダッシュせんといけんけど。
「やっぱ、下ろさへん」
「えええ!なんでですか!」
「おもろいから」
「面白くないですってー!もう、下ろしてくださいー!」
「ほな、名前前みたいに呼んでくれたら、下ろしたってもええよ」
にーっこり、満面の笑みで清に言ってやった。