Je vous aime. | ナノ
紫のひともとゆゑに
和尚さんに後始末がなんやかんやとただの雑用を手伝わされ、言いつけられたことすべてを終えたころには悪魔を倒したとき以上に疲れていた。主に精神的なものが。和尚さんは俺が清を好きなことを一発で見破り、ものすごくからかってきた。なんで俺こないに疲れとん?俺悪魔倒しに来たんやなかったっけか。
そんなことを思いながら、清を探す。大分待たせてしもーた。清に限ってないだろうが、もし怒ってたらどないしよ。探す足は無意識のうちに早足になる。
「カレシカレシ〜!」
「違うんやって!ああもう」
見つけた。子供二人にたかられて困っとる清を。子供と清なんてえらい和む組み合わせや。清は俺に背中を向けて座ってたから気づいてないみたいやったけど、清と向かい合ってた子供は俺に気づいたらしく、目を丸くしとった。子供向けの笑顔でひらひら手を振ってやると、嬉しそうに笑って清の袖を引っ張り出した。
「お姉ちゃん!カレシ!カレシ来たで!」
「おむかえやぁ!」
「えっ?」
俺を指差し子供は彼氏彼氏叫んどる。俺はいつから清の彼氏になったんやろうか。嬉しいな。ニコニコがニヤニヤにかわらんように清たちに近づく。清は俺を見て焦ったような顔をしとった。
「ちがっ、あの、子供達が勝手に彼氏言うてて」
真っ赤になって慌てる清がかいらしくて、少し悪戯してやろうと思った。
後ろに回って首に手を回し抱きしめる。
「お姉ちゃんと遊んでたんか?」
「うん!やっぱりお兄ちゃんはお姉ちゃんの彼氏さんやったな!」
「おねーちゃん、お顔まっかや!」
「ちょ、えっ、柔造さん!?」
「ははは!ほな、お兄ちゃんらは帰るなー。またな」
「ばいばーい!」
「ばいばい!」
真っ赤になって固まっとる清を半ば引きずるようにして寺から出た。
出張所に帰ってからもしばらく清は動かんかった。
紫のひともとゆゑに
(あなた一人がいるだけで。)