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「道場に」


実はあの子は少年じゃなくて、少女でした。本名は雪村千鶴で、仕事で帰らない父様を探して京に出てきたその日に新選組に捕まりました。父様とは実は私達のよく知る綱道さんでした。
昨日あの後、総司とちょっとした騒動を起こした罰として買い物に行かされた私がそのことを知ったのは今朝だった。
教えてくれたのはまたも左之だった。


「へぇ、あの綱道さんの娘さんだったんだー。……あの人、子供いたんだ」
「あぁ、それ俺も思った」


左之と二人で廊下を歩いていたら、平助に出くわした。平助は私たちを見つけたとたん、嬉しそうに顔を輝かして、小走りで近寄ってきた。くそ、かわいいな。


「左之さん!夕!二人して何やってんだ?」
「よ、平助。いまから、左之と稽古しようと思って、道場に行く途中」
「たまには刀でも稽古しとかねーとなって思ってな」
「いいなー!俺も行く!!……て言いたいところなんだけど、今見張りしてるからなー」
「見張り?誰の?」
「千鶴のだよー。土方さん命令で」


おい、いつから名前呼びになったんだよ、と囃し立てる。そういや、平助はそんなに警戒心を持って接していなかったな、と思い出した。歳も近そうだしな。と一人納得する。


「雪村も、連れて行けばいいんじゃね?」
「あ、そっか!おい千鶴ー!」


私の意見を聞いた平助は、沈んだ表情から一気に嬉しそうな顔に変わり、雪村の部屋であろう障子を開けた。雪村は部屋の真ん中に座っていたみたいで、少し驚いた顔で私たちのほうを振り向いた。
左之は隣で、よ。と片手を挙げていた。
この中で面識がないのは私だけか。


「あー、はじめまして?つっても昨日会ったか。多喜夕。よろしく」
「昨日、沖田さんと喧嘩してらした方、ですよね?雪村千鶴です。よろしくお願いします」


私の軽い挨拶に、雪村は深々としたお辞儀で答えてくれた。なんか、申し訳なくなって私も軽くお辞儀をする。
挨拶も済んだし、そろそろ行こうぜ。そういった左之に続いて私たちも道場に向かって歩く。


挨拶



 





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