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「逃げて」

「お前は、男の子だぞ」


小さい頃から父様は私にそう行って来た。小さかった私は父様がそう言ったわけも分からず、毎日毎日剣術の稽古ばかりしていた。

自分の身は自分で守りなさい。余裕が出てきたら、自分の大切なものを守れるようになりなさい。

私の頭を撫でる父様は悲しそうな顔で、いつもそう言っていた。それから半年後、人間の争いに手を貸すことを拒んだ多喜家は、人間に攻め滅ぼされた。
父様は死んでしまう間際言った。


「恨んではいけないよ、静香。これからは、人として、人にまぎれて暮らしなさい。そして、大切な人を見つけて、長生きしなさい。」


それが父様の最後の言葉だ。

それからのことはよく覚えていない。とりあえず逃げて、逃げて、逃げて、倒れた。次に目を覚ましたら知らない家だった。そこは試衛館という道場らしく、少し年上のお兄さんたちと、私より年下の子がいた。
それから何年かして、試衛館から何人か、剣に秀でた人達により新選組が結成された。私の剣の腕も認められその中に入ることができた。

以上、お話したのは新選組多喜夕、本名を多喜静香の今までの生い立ちでございます。






 





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