sweet | ナノ




「あ、猫」




「暇だなー田中」
「そうですね……あっ、いや!暇じゃないですよ!もう見張りに一生懸命です!」
「そうですねって言っちゃってるし」


私は今、うちの隊士の田中くんと二人で屯所の裏門の見張りをしていた。
前は裏門に門番は置いていなかったんだけど、最近長州のやつらが京に集まってきてまた不穏な動きを見せてきたから、警備強化の一環で裏門にも置かれることになった。
ちなみに我らが組長は幹部会議の真っ最中だろう。
それにしても、やっぱりこの間の静けさは嵐の前のなんとやらだったのかと、少しがっかりする。
そうだよね、池田屋で長州のやつら大量捕縛しちゃったもんね、そりゃ怒るわな。


「はぁ」
「ちょ、夕さん、真面目にやってくださいよ」
「うるせーなー、だって暇じゃないか。考えてみろ?屯所に直接乗り込んでくる馬鹿居ると思うか?いないだろ。よほどの馬鹿じゃなきゃそんな無謀なことしないだろ?」
「まあ、そう、ですけど……」


口ごもる田中を横目に、門に背中を凭れさせしゃがみこむ。
あーあー、暇だなぁ。いっそのこと長州の奴ら来てくれていいよ。馬鹿正直に乗り込んでくる馬鹿なんてきっと雑魚だろうから成敗してくれる!
そういや、今は亡き父様と母様は討幕派だったんだろうか、いやまあ、鬼だから倒幕も何も無いんだろうけど。


「田中くんはご両親と連絡取ったりしてるのか?文とか出したり」
「あー、いや、……うち、両親は俺が小さいときに死にました」
「……、ごめん」
「いえ!あ、夕さんのご両親は!?」
「うちも死んでる」
「あ、」
「あ、」


話題がなくなった。
もんのすごく気まずい沈黙が流れる。
田中くんは歳が近いから仲は比較的よかったんだけど、こういう身内的な話はしたことなかったなーと思って振った結果がこれだよ。
だめだなあ私。
何とかこの空気を変えようと話題を探すけど、浮かんでくるのは最近の長州の動向だったり、この間拷問した長州のやつらへの悪口だったり、倒幕を目論むやつらへの悪口だったり、ましな話題がなかった。
うーん、と頭を抱えて、出てきた。なんだ、もっと身近な話題があった。


「それにしても左之は今頃幹部会議かー。千鶴にお茶入れてもらってるんだろうなー。いいなー」
「なんで女の人が女の人にお茶入れてもらいたがるんですか。おかしいでしょ」
「いやいや、だってかわいいじゃないか、あの子」
「でも、あまり俺たち平隊士は会えないですよねー。あ、猫」


そう言って田中くんはすり寄って来たトラ猫を可愛がっていた。
田中くんは動物に懐かれるのか、そうかそうか。

………ん?


「え?」
「え?」



衝撃
(今なんて?)


 →





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