sweet | ナノ




「お前は」


「やってらんねーね、暑くて」
「そーだな」


扇子で自分自身を仰ぎながら隣に座る左之に話しかけた。縁側は風が通るのでまだ涼しい。
先日池田屋での大取り物が終わってからというもの、どうにも攘夷派の連中の威勢が落ちていて、暇な日が続いていた。いやまぁ、私達新選組が暇に越したことはないけれども。
私は池田屋事件のときは山南さんと二人で屯所を守っていたからよく知らないけど、千鶴ちゃんが活躍した、らしい。
千鶴ちゃんはあのその一件である程度は信用され、私を取り巻く環境は少し変化した。


「新八はどこいんの」
「あっちの井戸で水浴びてんじゃねーのか?」
「いいな、浴びたい」
「お、お前はダメだろ!ばれんだろ!」
「知ってるよ分かってるよ、冗談だって」


だからこうやって足だけ水に浸かって我慢してんでしょ、と左之を睨む。左之は随分過保護だ。
今私の足元には水がたっぷり入った桶がおいてあって、それに足を浸けている。
冷たくて、足だけは気持ちいい。


「あー、やっぱ水浴びたい」
「ダメだっつってるだろ」
「左之のおやじ」
「なんでそーなるんだよ……」


左之に水浴びと足水との違いについて語っていたら平助が来た。


「夕!左之さんも!あっちで一緒に水浴びしよーぜ!」
「いい「お前はだめだろ!」
「左之のケチ」
「なんで夕ダメなんだ?」
「夏風邪気味らしいぜ」
「はあ!?」
「それなら仕方ないな、夕」
「いやいや、ちょ!」
「それより、夕足女みたいだなー、めっちゃ綺麗!」
「!?」


平助の言葉に今度は左之が冷や汗をかきだした。精々焦ればいいさと、ふくらはぎあたりで巻くっていた着物の裾を、太ももあたりまでずり上げた。


「おい、夕!」
「足ねえ」
「うお!お前本当に男なのか!?つか筋肉ねー!!」
「うるさいな、俺は綺麗に筋肉付いてんの!」
「やめろって下ろせよ!」
「左之さん何焦ってんだ?」
「欲情すんなよー左之」


そう言った瞬間、左之の脇に抱きかかえられてどっかの空き部屋に放り込まれた。後ろからはどうしたんだよ!と叫ぶ平助の声が聞こえる。
畳に盛大にしりもちをついた私は尻をさすりながら左之を非難の意味を込めて見上げる。

が、左之のひきつった笑い顔を見て、私の笑顔も引きつった。


「お前、は、ほんと」
「え、ちょ、ごめん左之?くすぐるのだけは勘弁!!」
「人からかいやがって、覚悟しろよっ!!」




初夏

(笑いすぎて次の日筋肉痛になった。)





 





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