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「ごめん」



「何やってんだ、原田、夕」
「土方さん!聞いてくれよ!左之がくすぐってくるんだよ!」
「おめぇが原田困らせたんじゃねーのか」
「ちっげぇし!酷い土方さん!」
「原田も、コイツは怪我人だがな、怪我してんのは足なんだ。頭ならどんっどん殴ってやれ」


そう言うと土方さんは障子を締めて出て行った。

暇だ暇だと喚き散らす夕を黙らせてやろうと脇をくすぐろうとした。夕に馬乗りになって脇を掴んだ瞬間、俺は感じた違和感に固まった。

………柔らけぇ。

男でしかも剣を毎日毎日扱っているやつにこんなに脂肪が付くか?いやつかねーだろ。しかもこんな所に。デブじゃあるまいし。胸?いやいや常識考えてねーだろ俺。最近新八と飲みに行き過ぎか。そーだよなまさか夕が女なんてことねーよな!俺多分疲れてるんだよ。


「左之、」
「おおおおお、俺なんか疲れてんのかもしれねえ!」
「落ち着けって、錯覚じゃないから、疲れてないから」
「だっ、おま、胸!」


慌てる俺を尻目に、夕は乾いた笑いを漏らした。諦めるような、泣きそうなような。
その表情に俺は少し冷静さを取り戻した。


「お前、女、なのか?」
「うん、……黙っててごめん、よ。秘密にしてたわけじゃないんだ。言う、機会がなかったって言うか……、みんな、ずっと私のこと男だと勘違いしてたからさ、なんていうか、訂正するの恥ずかしくて。……ほら、実は女なんだよー、なんて、なんかおかしいでしょ」


俺は気づいた。夕の布団を握る手が震えてることに。
よくよく思い出してみたら、自分から男だなんて一回も言ったことがなかった気がする。
それに、夕が女だったとしたら、今まで感じた違和感にも納得がいく。
クソ暑いときも、俺や新八や平助がふんどしだけになってても、夕は絶対やらなかったし、面倒だからと風呂に一緒に入ろうとしたら、ものすごい勢いで否定したり。
怪我したときもなかなか俺らに手当てさせなかったし、さらし巻いてるのはなんでだって突っ込んでも答えなかった。

あぁ、夕は女なのか。

やっと理解できた俺は改めて夕を見た。
俯いていて、表情はわからない。だが、布団が濡れているのに気づいた。
泣いてるのか。


「ごめん、な、左之」
「……なんで、そんな泣きそうな顔してんだよ」
「だっ、て、だましてた、わけだし。女が剣、握るのなんて、左之、おかしいって言ってたし」
「別に騙してたわけじゃねーだろ。俺らが勝手に勘違いしてただけだ」
「ごめ、本当、ごめん。頼む、……嫌わないで」


もう夕は話すのもやっとって感じだ。
不思議なもんで、女って分かるともう夕は女にしか見えなくなった。
泣きながら俺の着物の裾を掴む姿を、不覚にもかわいいと思ってしまった。
男だらけのなかで夕はどれだけ今まで頑張ってきたのだろう、多分その苦労とか辛さは俺には分からない。今#多喜#は、俺に嫌われることを恐れている。
そんな、性別だけで、嫌うかよ。


「性別なんて、関係ないだろ?俺がお前を、嫌うわけないじゃねーか」




友情






 





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