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3.2.1.バン!!
気が付いたら知らない場所にいた。
手と足は柱に縛られていて、身動きができない。
政宗様の安否が気になったが、この部屋には居ないようで少しホッとした。
捕まる前、俺は執務をしない政宗様を追いかけていた。
政宗様が落とし穴に落ちる寸前、後ろから誰かに殴られて…。
落とし穴に集中していたと言え、後ろをとられるなんて不覚だった。
それにしても、俺を拉致ったやつは誰だ。
武田の忍か。
「ちがうわ、武田じゃない」
後ろから女の声がして目を覆われる。
女に二度も後ろをとられたことに腹がたって舌打ちしたら、女の手が離れた。
女は俺の正面へまわりこんで、視線を合わすようにしゃがんだ。
「舌打ちなんてしないで。私は敵ではないわ」
悲しそうに話す女は、浮き世離れしてるほど美しく、思わず息を呑んだ。
女が高い位置で括っていた髪をほどいたら、媚薬にも似た甘い香りがひろがった。
「伊達のお殿様なら無事よ。あなたが掘った落とし穴を見事によけて城下へいったわ」
確信はなかったが、この女が嘘をついているとはなぜか思えなかった。
どうだかな。と皮肉気に笑って言えば、やっと話してくれた。と女は零れんばかりに笑った。
「近くで見ればみるほどいい男」
そういって鼻先が触れ合うほど近くにこられて、柄にもなく顔に熱が集まるのを感じた。
流されるな。そう自分に言い聞かせる。
もうすぐ、縄はほどける。
「警戒しないでよ、あなたを殺すつもりはないの」
「どうだかな」
不機嫌そうに顔を背けたら、泣きそうな顔で女はそう言ってきた。
俺が答えれば、すこし驚いた顔をして。
いまだ、とほとんど切れかけた縄を力任せに解き女を組み敷いた。
白い首元に小刀をつきつけるのを忘れずに。
「手落ちだったな、袖に小刀を入れていたんだよ」
「私を殺す?」
「さあな」
皮肉気に笑えば、女の手が俺の頭を引き寄せた。
とっさに首を切らないようにと小刀をそこらへ放り投げ、下の女をつぶさないように腕に力をいれた。
触れた唇は、予想以上に柔らかかった。
「私と、楽しいことしましょ?」
恋に落ちるまで
(3,2,1、バン!!!)