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旅立ちと悲しさと
どうしても無理なの?
そう真子は呟いた。
俺だって真子のことは好きだ、愛している。
それでも、それだけじゃもうダメなんだ。
「別れよう」
真子の目にためられていた涙が流れた。
それは堰を切ったように後から後から、頬を濡らしていく。
それを拭おうと手を伸ばしたが、小波は俺から一歩離れて手が届かないくらいの距離をとった。
「もう、触らないで」
別れようと、自分から言おうと思ったときに覚悟は決めていた。
自分も一緒に傷つく覚悟を。
それでも、真子の泣き顔を見て、震えた声を聞いて、痛かった。
覚悟してたはずなのに。
彼女の傷ついて泣いている顔を見たら、こんなにも辛い。
俺は今彼女になんて言えばいい?
愛してるって慰めればいいのか。
本当は別れたくないと言えばいいのか。
いや違う、俺が言わないといけないのは、
「ごめんな」
1人で教団で働くことを決め、彼女の言い出せないまま出発の日になった。
彼女に相談していれば、こんなに悲しませなかったかもしれないのに。
最後に、独り言のように愛していると呟いて背を向けて歩きだした。
後ろから彼女のすすり泣く声が聞こえる。
一度だけ願いが叶うなら、2人が歩く道が違う前に戻りたい。
自分の頬に伝った涙は拭わなかった。