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medicine
私は思う。隣の席の勝呂くんは絶対に頭痛持ち仲間だ、と。
私は偏頭痛持ちだ。そりゃもう小学校低学年で既にその症状を発生させ、かれこれ十年近くは奴と付き合ってきた。
そんな私の一番の親友、もとい救世主は頭痛薬、この人である。あ、人じゃなかった。
今までバファリン、イブ、と色々試してきたが、一番相性がよかったのはこれ、セデスである。
そのセデスが、隣の席の勝呂くんの鞄から覗いていたのだ。
しかも箱で。
「………」
これは仲間だ、と確信した。
それから観察を続けてきたが、たまに見せるこめかみを揉む仕草だとか、眉間を揉む仕草だとか、大きな音を嫌そうにする表情だとか、絶対にあれは頭が痛いときにする行動だ。
「……、なあ」
そんなことを考えていたら、勝呂くんが話しかけてきたぞ。
どうしようどうしよう、私高校入ってから男子とまだ一回も話してない。
「俺に何か用か?ずっと見とるけど……」
「あ、えっと、」
私がガン見してたのが原因か、なるほど。
いや、しかし、これはチャンスではないのか。
今まで私が育ってきた環境は頭痛持ちの人がいなかった。
これは神様が私に与えてくれたチャンスだ、そうだきっとそうだ。
これで高校生活、苦痛を共にする人が出来るではないか!
「勝呂くんは、頭痛持ち!?」
「はぁ?いきなりやな」
「あ、ごめん、……たまに、頭痛そうにしてるから……」
「よぉ知っとんな。まあ、頭痛持ちやで。緊張性やなくて、偏頭痛のほう」
「やっぱり!私もだよ!」
やはり私の予想は当たっていた。
しかも頭痛の種類まで一緒とは、運がいい。
というか、これはもう運命だと思う。
「結婚してください!」
勝呂くんの両手を握り締めて言い切った。
私が手を握った瞬間、勝呂くんは真っ赤になってあたふたしだした。初心だ。初心だ。
婚約指輪代わりに頭痛薬でどうでしょう、と私は財布から常備しているセデスを取り出した。
「な、な、な、何言いだすねんいきなり!」
medicine
(子猫さん!坊にとうとう春が来はったで!)