log | ナノ
目撃者、生徒
こないだの日曜日、先生彼氏といたでしょー!!
チャイムが鳴って教室から出ようと荷物を片付ける私のもとに、教え子の女の子が四五人走りよってきた。
それも満面の笑顔で。
かわいい子は癒されるなぁ、うんうん。
「私、この間の日曜日先生見たよ!池袋で!」
机に手を置き、乗り出すようにして話しかけてきた。
うんうん、そーなのー、よかったわねー。
と、流そうとして、思い留まる。
この間の日曜日は、池袋で静雄とデートだったぞ??
え、見られた?
「隣にいた男の人彼氏!?」
「先生うちらには彼氏いないっつってたのにぃ!!」
「で、センセ、彼氏なの!?」
教え子にデートを目撃されるなんて、恥ずかしすぎる。憤死しそうだあああ。
とりあえず、兄とかって言って誤魔化そう。
「違うわよ〜、あれ先生のお兄さんよ?」
「うそ!だって彼氏さんのほうがセンセに敬語つかってたもん!顔も似てなかったし!」
「え、敬語ってことは年下?年下?」
「先生やるぅ〜」
誤魔化せなさそうだ。
しかも静雄が敬語ってことまで知ってるってことは、けっこう近くに居たな。
ここまでバレてるならもういっそ開き直ったほうがいいかもしれない。
「もう、どんだけ近くにいたんだか。…そうよ、彼氏よ」
「ひゅ〜!!結婚は?結婚は??」
「彼氏さん背ェ高かったね!なんセンチ?」
「つか先生の私服がめちゃめちゃかわいかった!!萌えた!」
「えー!私も見たかった先生の私服ぅ!」
私服を今どきの女子高生に誉められてテンションがあがった。
もういっそのこと静雄の自慢でもしようと思ったら、予鈴が鳴った。やばあ、次も授業入ってるんだった。
「みんなありがとう。じゃあ先生次も授業だから、もう行くね?」
「あ、引き止めてごめんなさいセンセ!授業頑張ってねー!」
ガラガラ、
急いで教室から出たところで、中から慌ててさっきの子が私を追って出てきた。
「先生!すっごいお似合いだった!末永くお幸せにね!!」
その一言が無性に嬉しくて、私は満面の笑みで頷いて見せた。
目撃者、生徒
(と、言う話があったのだよ、静雄くん)
(そりゃ、なんか、……嬉しい、っすね)