log | ナノ 雨待ち歌
「いつ、帰ってくるの?」
思った以上に自分の声が震えていて、こらえていた涙が余計にこぼれそうになった。
大阪なんて、遠いね。
心配させまいと無理して作った私の笑顔を見て、新八さんの眉間に皺が寄った。
「わからねぇ」
新八さんの腕が伸びてきて、私をかき抱く。新八さんが差していた番傘が地面に転がった。虚しくカラカラと音を立てて、止まる。きつくきつく抱きしめられて、私はただ大きな背中に自分の腕を回すことしかできなかった。すがりつくように。
「新八、さん」
「元気で、いろよ」
「はい……、新八さんこそ、……お元気で」
「あぁ」
こらえていた涙が滑り落ちた。堰を切ったようにそれは止まらず、新八さんの着物を濡らしていく。それでも新八さんは、雨なのか私の涙なのか見分けられないだろうから、それをいいことに私は思いっきり泣いた。新八さん、私泣いてなんかないわ。
「明日が、来なけりゃいいのに」
耳元で聞こえた、震える声。珍しい、新八さんの弱音。
触れるだけの口付けをして、さよならは言わずに私たちは別れた。
雨待ち歌