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くらり




奥州の冬は寒い。とてつもなく寒い。
私はため息をついて、布団を頭まで被って丸まろうとした。
いつも私を抱きしめて眠ってくれる政宗が、すごく恋しい。
そんなことを考えていたら、障子が開く音がして、私は布団の中から顔だけ出した。


「I'm home Honey」


湯浴みを済ませてから来たのか、湿った髪が月明かりに照らされていた。
綺麗で、かっこよくて、優しくて、少し意地悪な私の大好きな人。
甲斐へ真田様と手合わせをしに行っていたのに、こんなにも早く帰って来てくれた。
私は喜びのあまり、寒さも忘れて布団から飛び出た。


「政宗!おかえりなさい!」


両手を広げて微笑んでくれる政宗の胸へ飛び込む。
二日ぶりの政宗の香りに包まれて、幸せな気分になった。
政宗は私の耳元で少し笑って、ぎゅうっと抱きしめ返してくれた。


「寂しかったか?」
「うん。すごいね、会いたかったの」
「俺もだ、Honey」


優しく優しく頭を撫でられる。
隻眼の瞳が私を愛しむように見つめてきて、思わず自分から政宗に口付けた。
驚いたのか一瞬政宗の肩が跳ねたが、それはほんとに一瞬で、いつも通り少し強引な口付けを返される。
このまま、食べられてしまいそうだ。


「まさ、むね」
「今日は、やけに積極的じゃねーか」
「寂しかったんだもん」
「素直だな。好きだぜ、そんな真子も。……だから、」


黙って俺に喰われろ。

そう言って政宗は私の肩を軽く押した。
不意打ちだったので私の体はいとも簡単に布団に沈んだ。
政宗がニヤニヤした顔で私の上に覆いかぶさってくる。
顔を背ける私を無理やり正面に向かせ、口付けをしようと政宗は顔を近づけてきた。
私は自分の顔と政宗の顔の間に掌を割り込ませ、待ったをかける。


「ちょ、政宗、寝よう。疲れてるでしょ?」
「Ha!久しぶりなんだぜ?野暮なこと言うなよ」


政宗の左目が、熱を持ったように見えた。

それはまるで、獲物を捕らえる獣のように。

私が、その瞳に弱いことを知っていて、政宗はこういうことをする。
反則だ。と呟こうとした私の唇は、噛み付くような口付けでさえぎられた。
思考が甘くとろける。
幸せで、政宗を近くに感じたくて、たくさん愛されたくて、私は政宗の首に腕を回した。


「じゃあ、たくさん、愛してね」
「OK」

熱の籠もった視線にくらり


(嫌ってぐれぇ愛してやるよ、真子)




企画サイト「鎖骨」様に提出
手直しする前のものです。
ありがとうございました!




 


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