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いまだけは気付かないで



任務帰りに、森で女の子を拾った。
体中傷だらけで、倒れていたところを俺様が見つけた。
無視して行こうかと思ったけど、旦那なら絶対助けるだろうな、と思って拾った。

城に着いてから、その子のことを旦那に話したら、よく助けたと誉められた。
大将からもそんな感じで誉められたはいいんだけど、俺様に世話をするようにと命じた。
この子が治るまで面倒をみてやれ、と暇が貰えたのはよかったけど。

「しかし、切り傷ですよねこれ。こんな子がなんで」

忍の部下の1人が包帯を取り替えながら呟いた。
彼女の傷はほとんが切り傷で、他に殴られたような痕がいっぱいあった。

「この子が起きるまでは、なんとも言えない、な」

少し納得いかないといった顔をしてソイツは出ていった。
俺様も出て行こうと、その子の頭を少し撫でて立ち上がった瞬間に手を掴れた。
眠っているはずの彼女に。

「い、かないでっ・・・」

いつのまにか目が覚めたらしくて、俺様のほうを涙目で見ていた。

「とうさまっ、いい子に、するから・・・!」

俺様のことを父と勘違いしているのか、いや、ありえないだろう。
俺様を見ているようで微妙に焦点がずれているその瞳に違和感を感じた。
目が、見えてない?
彼女の目の前で手を振ったら何の反応も見せずに泣いていた。
ああ、見えていないんだ。だから、俺様を父と。

「包丁も、痛いのっ、我慢するから!置いていかないでぇ!」

捨てたはずの心が鳴った。涙して俺様の腕にしがみつく姿に、その長い黒髪に。
その切り傷をつけた父親に腹が立ったが、今俺様が父じゃないと言ったらどうなるだろう。
この子は壊れるだろうか?

「とおさまぁ!!」

耐え切れずに抱きしめた。驚いて息を呑んだ気配がしたが、その細い体を放そうとは思わなかった。
黙って頭を撫でてやる。俺様が声を出したら、気付かれるだろうから。
酷いことをしているのはわかっている。それでも、今だけは。






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