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もう堕ちない


(ヒロイン死ネタ)






「くっ、忍、だったのか」

「うん・・・・・・、」


それでも、私はあなたを愛していたよ?と首を少し傾げて悲しそうに真子は言った。
なんだよなんだよなんだよ!
全然そんな素振り見せなかったし、身のこなしもただの団子屋の女の子だと思っていたのに。

腕が痛い。さっき真子に切られた傷が痛い。
じんじんして視界が霞んできた。
毒かよ。


「佐助、泣かないで」

「はっ、泣いてなんか」


毒なんかじゃない。涙かよ。
頬を伝う冷たい涙の感触に余計に涙が溢れそうになる。
真子を愛していた。
ずっと一緒にいたいって本気で思っていた。
真子も同じだと思っていたのに。
まさかこんな形で裏切られるなんて。


「ごめんね、佐助」

「俺は、愛してたのに」

「私も、愛してるよ」


でもね、私の体には暗示がかかってるから、ダメなの。
そう言って目を伏せた真子の目からも涙が零れた。
ねぇほんとに?俺様のこと愛してるの?今でも?
聞きたい事は沢山あるのに口はわなわなと震えるだけで、声にならない。
こんな状況なのに、静かに泣く真子が綺麗だと思った。


「私を殺して、佐助」

「っ、無理だ!」


困ったように笑う真子の腕が震えている。
クナイを握る右手を必死に左手で抑えているからだろう。
右手の指先の色は白くて、どれだけ耐えているかを物語っていた。


「はやく、佐助は私より強いから、大丈夫だよ」

「無理だ無理だ!」


首を左右に振る。
確かに実力じゃ俺様のほうが上だろうけど。
真子の首くらい、かんたんにへし折れるだろうけど。


「はやく佐助!」

「なんでだよ!俺だけ生き残らないといけないのかよ!」


こんな人らしい自分が残っていたんだ。
大切なものを失いそうで、必死にそれにしがみつく自分が。
真子の手からクナイが投げられた。
それを跳ね返して、一気に距離を詰める。

動けないように、きつくきつく抱きしめた。


「佐助ぇ、殺して、よぉ!」

「殺せるわけないだろ!」

「佐助を傷つける自分なんて、いや!」


暗示の力が弱まったのか、真子の手が俺様の背中にまわる。
いるかわからない神様、あんたホント悪趣味。
どうせ上から俺達を見て笑ってんだろ。


「いやだいやだ!はやく殺して!ねえ!」

「っ!!」


私は、佐助の手で、殺されたいの。

俺から体を離して、そう囁かれ、俺はクナイを思いっきり真子の心臓につきたてた。
真子が俺にもたれかかるように倒れる。
真っ赤な血が俺の服を汚していく。


「あり・・・がと、う」


真子の瞼がゆっくり閉じられた。
まだ少し暖かい真子の唇にそっと口付けて、もういちど抱きしめた。


ごめん、真子の苦しそうな顔を見ていられなくて、俺は殺した。
真子のためなんかじゃない。俺のため。
怨んでもいいぜ。俺様幽霊は少し苦手だけど。
それくらいの覚悟はできてるから。



抜け落ちた
(大切ななにか)






 


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