心に垣をせよ | ナノ




心に垣をせよ #23




「ねぇなまえ先輩、お父さんとお母さんはいつ帰って来るんスか?」

『…多分、明日か明後日。今日は帰って来ない。』

「じゃあ、今日も一緒にいていい?」

『……………』


朝ご飯も食べ終えて、今は二人ソファに座って抹茶ラテを飲みながらテレビを見ている。あ、おは朝が始まった。


「ねぇ先輩?」

『……………』


おは朝を尻目に、先輩の返事を待つけど帰って来ない。ムスッとしている。何だよ、もう。


「…先輩俺のこと嫌いなの、」

『嫌い。』

「えっ」


即答…!!
えっ昨日先輩俺のこと好きって言ったじゃん!!女心と秋の空は変わりやすいってよく言うけど…言うけど!!これはちょっと変わりやす過ぎやしないか。あれから24時間経って無いのにもう振られんの、俺。


『…答えが分かりきってる質問をわざわざしてくる黄瀬なんか、嫌い。』

「…………え、先輩それどういう…」

『……………』

「俺は、先輩と今日も一緒にいていいの?」

『……………』

「…黄瀬しつこい」

『ねぇなまえ先輩、答えてよ』

『……………』


ぽすっ


「?」

『一緒にいたい、』


先輩は俺に寄りかかってから、拗ねたように答えた。


「………先輩ひどい。俺もう嫌われたのかって思ったんスよ?」

『昨日私の気持ちちゃんと伝えたじゃん』

「でも不安になっちゃうんス」

『どこの乙女だよ』

「ねぇなまえ先輩、もう一回言って?」

『……………』

「……………」

『…………………好き、』


目線を下にやれば、正面からは当然見ることが出来ないが、俺の肩の上で薄く頬を染めているなまえ先輩が見えた。


飲みかけの抹茶ラテを目の前にあるローテーブルに置く。それから、なまえ先輩の手からもマグカップを取り上げ、置く。


『? 黄瀬? …っ!』


なまえ先輩を抱きしめた。


『いきなりどうしたの?』

「いきなりじゃないッスよ… 先輩が一々可愛いから…我慢の限界が来ただけッス…」


本当は、頬を染めた先輩を見た時にもう既に限界に達していたのだが、こぼして火傷したらいけないと思って、ちゃんとカップを置いてから行動に移した1分前の自分を褒めてほしい。よく我慢した、俺。


『先輩に…可愛いって言うな…』


いつもの台詞は言うけども、いつもの抵抗は無い。…無意識なんだろうなー。だから、そういう所が、一々可愛いって言ってんだっつの。


「…なまえ先輩、好き。」

『…知ってる、』


この体勢で話すと、先輩の声が耳元で聞こえてどきどきする。なまえ先輩もそう思ってるのかな。


「ねぇなまえ先輩、」

『…なに、』

「散歩行きませんか、」

『…え?』

「今日天気もいいし、きっとすげぇ気持ちいいッスよ」

『…うん、』

「それから、スーパー行って買い物して、帰ってきたら一緒にお昼ご飯作ろ?」

『…うん、』

「そのあとはまた二人でのんびり過ごして、そしたら帰るッス。で、先輩に帰り際にあげたいものがあるんス。」

『あげたい…もの?』

「それはまだ秘密なんスけどね? とりあえず今日一日、こんな感じでどうッスか?」

『…うん。』

「丸一日一緒にいられることなんて、殆ど無いんスからね?先輩今のうちに甘えておかないと後で後悔するッスよ?」


なんて。流石にこれは殴られるかな。


『…うん、そうだね。』


『じゃあ、もう少しだけこのまま。』


俺に抱きつかれるがままだった先輩がそっと手を回してきたのは、ちょうどおは朝が一位の星座を発表した時だった。


おめでとうございます!一位は双子座のあなた!特に恋愛運は絶好調!ラッキーアイテムは…





* * *

2012.10.15




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