心に垣をせよ #21 「ん、」 ゆっくりと目を開ける。 なまえ先輩がいる。 昨日は、幸せすぎて体が熱いなんて、バカ丸出しの目覚めだったけど、今日は大分体が軽い気がする。幸せなのは変わらないけど。 カーテンの隙間から差し込む光はまだぼんやりとしていて、おそらく今は朝の4時過ぎといったところだろう。昨日は沢山寝たので、かなり早く目が覚めてしまったようだ。 とりあえず体温でもはかっておくか。 「なまえ、」 体温計が俺の体温をはかっている間、隣ですやすやと眠るなまえ先輩にそっと触れる。少し長い睫毛に縁取られた目蓋は今は閉じられていて、口は少し開いていて、あどけない寝顔を俺に惜しみなく見せつけながら小さく寝息を立てている。俺の初めての彼女がこんな可愛い年上だなんて、考えもしなかった。 ピピピッ 体温計が俺の体温をはかり終えたことを知らせる。 …36.7℃。 「…先輩、俺熱下がったよ、」 小声で報告をする。 『き、せ…』 「……………」 すると、俺の言葉に返事をするように、なまえ先輩が寝言で俺の名前を呼んだ。俺の夢でも見てくれているのだろうか。 …あぁどうしよう。キス、したい。でも流石に初めてのキスはなまえ先輩が起きてないと駄目だよな。…おでこにならいいかな。 再びなまえ先輩を見る。 このまま可愛いらしい寝顔を見ていたい気もするし、目を開けて、その瞳に俺を映してもらいたい気もする。 キスしたら起きるかな、なんちゃって。 カーテンの隙間から差し込む光は、だんだんと白く、眩しいものになってくる。 「なまえ、」 先輩のおでこに、キスをする。 『……………』 なんだ、やっぱ起きないじゃん。ちゃんと、おとぎ話のように、唇じゃないと駄目なのかな。いつかまた実践してみよう。まずはファーストキスを済ませてから。あの笠松先輩の次ぐらいに照れ屋ななまえ先輩は、どうしたらキスさせてくれるだろうか。ゆっくりと体を起こす。 「なまえ先輩、」 先輩の頭を撫でながら、 「覚悟しとけよ、」 宣戦布告をして、今度は髪にキスをする。それから俺は、二人分の朝食でも作ろうかと、あまり音を立てないようにして部屋を出た。 『…………………バカじゃないの、』 * * * 2012.10.08 |