心に垣をせよ | ナノ




心に垣をせよ #01




部活も終わって、俺は帰り道をだらだらと歩いていた。すると、前方に先輩らしき人発見。そういえばこの辺は先輩の家の近くだった気がする。って…


「…え、」

「おぅ黄瀬、」

「先輩、彼女いたんスか…」

「は?」

「いや、だってその人…」

「…あ、こいつ?バッカちげーよこいつは隣の家の」

『どうもみょうじです。笠松とは幼なじみです彼女じゃありません私もっと理想高いです。』

「お前しばくぞ」

『しばき返すぞ』

「はぁ、」


先輩と話し込んでいた女の子。どうやらこの人は先輩の彼女ではなく、幼なじみらしい。それにしても、先輩に女の子の幼なじみがいたなんて初耳だし、ちょっと意外だ。


『…で、君だれ?』

「え」

「え」

『え』

「…なまえお前、黄瀬知らねえの?」

『笠松の後輩なんだろうなってことは会話からわかったけど、残念ながらそれ以外のことは存じ上げてません』

「…うちの高校に黄瀬を知らねえ女がいるとはな」

『え、君そんな有名人なの?なんだよ笠松教えてくれといても良かったじゃん』

「じゃあ今教えてやる。黄瀬。バスケ部1年。バカ。以上。」

「先輩ひどいッスよ!違います!バスケ部1年、黄瀬涼太ッス。あと一応モデルやってるッス。」

『へーそーなんだ』

「リアクションうっす!」

『え、それでなんで有名なの?』

「…まぁモデルだから?女子からのアレとー…、あとこいつ、キセキの世代」

『キセキの世代?』

「ほら、去年言ったろ。来年すげぇの入るぞって。」

『…あー…、言ってた言ってた。え、じゃあ君結局すげぇの?バカなの?』

「すげぇバカなの」

『あーなるほど』

「先輩ひどいッス!!」


先輩がひどいのはいつものことだが、この人も大概だ。さすが先輩の幼なじみ。


『ほらほら2人とももう帰んなさい。死ぬほど疲れてんでしょ』

「…まぁ、そうだな。そろそろ帰っか。っつっても俺たちは家ここだけどな」

『じゃあ、また明日。』

「おぅ」

『君もまた明日…いや、君とはもう会わないかもね』

「え!」

『嘘だよばいばい黄瀬』

「え、あ、はい…」


そう言って笑ったあの人の顔が、酷く頭に焼き付いた。





* * *

2012.9.13




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