心に垣をせよ | ナノ




心に垣をせよ #16




「おい買ってきたぞ」

『あ、おかえりー 流石速いねーやっぱ全国区は違うわー』

「買い物スキルが全国区なんじゃねぇよ」

『え、知ってるよ何その返し』

「……………」

『笠松もう朝ご飯食べた?』

「食ったけど腹減った」

『じゃあ適当になんか作るわ。黄瀬も今作ってくるからちょっと待っててねー』

「ハイッス!」


パタン…


「……………」

「……………」


また…また笠松先輩が俺のこと超見てくる…!!あれ、俺何かしたかな。心当たりありすぎてわかんねぇ…!!


「…お前バカのくせに何風邪引いてんだよ」

「…流石に濡れてた時間が長すぎたみたいッス…」

「…ったく…」

「……………」

「……………」


…気まずい…!!え、なんで?心当たりありすぎてわかんねぇ…!!


「…なぁ、一つ聞いていいか」

「…なんスか?」

「あれ…何?」


笠松先輩があれ、と指差したのは、俺の…その、えっと、忘れ物。


「…俺のTシャツッス。」

「んなもん見りゃわかるっつの。何であそこにあんだって聞いてんだよ。」

「…忘れ物ッス」

「は?」


笠松先輩は心底意味がわからん、という顔をした。


「俺、それ…忘れ物ッス…」

「……………お前、バカじゃねぇの」

「……え、」

「俺の物がなまえの部屋にあったのが気にくわなかったとかそんなんだろ」

「え! そんな訳な…」

「……………」

「………そうかもしんないッス…」

「……………」

「…先輩、俺恥ずかしい」


とりあえず、赤くなった顔が情けなくて布団で隠す。


「………あともう一つ、…なんでお前なまえのベッドで寝てんの?わざわざ移動してきたのか?」

「…えっ」


…言えない。
なまえ先輩のベッドでなまえ先輩と一緒に寝たからです、なんて…言えない。


「…おい、どうなんだよ」

「…な、成り行きッス…」

「はぁ?」

『黄瀬ー出来たよー』


ちょうどいいタイミングで、なまえ先輩が入ってきてくれた。助かった。


『起きれる?』

「大丈夫ッス…」

『卵粥なんだけどね、熱いから気をつけて』

「……ねぇ先輩、」

『んー?』

「食べさせて、」


なんて、ちょっと甘えすぎだろうか。っていうか笠松先輩…顔やべぇ。


『はいはい、なるべく全部食べてほしいんだけど辛かったら残してもいいんだからね』

「………先輩、優しすぎッス」

『昨日黄瀬が私のワガママいっぱい聞いてくれたから。はい、口開けて』


言われるがままに口を開ける。


『大丈夫?熱くない?』

コクリと頷く。


『味も大丈夫?』


コクリと頷く。


『良かった、』


なまえ先輩は安心したように笑った。


「先輩、」

『ん?』

「俺今幸せッス。」

『………熱出してるくせに何言ってんの!』


最初先輩は驚いた顔をしたが、すぐに笑って頭を撫でてくれた。
だって、熱出した時に先輩が料理作ってくれて、食べさせてくれて。今までの俺からじゃ考えられない。幸せだと思う。
俺は卵粥を残さず完食した。熱があるとはいえ、昨日から何も食べてなかったし、それに先輩の料理を俺が残す訳がない。


『おー全部食べれたね。えらいえらい。』

「ごちそうさまッス」

『ん。あとは水分補給して…。はいこれポカリ。笠松が買ってきてくれたよ。』

「ありがとうございます」

「…おぅ、」


先輩から手渡されたポカリを口に流し込む。


『はい、じゃあこれここ置いとくからね。こまめに飲むんだよ。』

「ッス…」

『あとは…これで汗拭いて、』


手渡されたタオルで言われるがままに汗を拭く。


『はい、また横になってー』

『これ、新しいのまたおでこに乗せとくよ。』


そう言って新しいタオルをまた乗せてくれた。


「俺、こんなに色々やって貰ったの初めてッス…」

『これからはいつでもやってあげる。…でもなるべく風邪引かないでね』

「…ハイッス…」

『うん。…じゃあ、また寝よっか。』

「…なまえ先輩、」


先輩の手に触れる。


『…ふふ、ここにいるよ。』


そう言って俺の手を握ってくれた。なんだか安心出来て、それから急激に眠気が襲ってきた。


「…おやすみ、黄瀬。」


最後になまえ先輩の声が聞こえたのをうっすらと感じつつ、俺は眠りに落ちた。





* * *

2012.9.29




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