他意?あるわけないだろう 「っあ゛ーマジきちぃーーーつかハラ減ったーーー」 「うるさいのだよ」 今日は朝から散々だった。 クラスでは紐パン疑惑をかけられ、教師には呼び出され怒られ、部活では襲われ…。 どれもこれもあのバカのせいだ。 しかし俺の隣でうるさくしてるこいつは、あのバカを好いているという。まったく、心底理解出来ん。 今日は、もう帰るだけだ。あのバカはもう当然帰っただろうし、もしかしたらもう涎を垂らして寝てるかもしれない。 とりあえずは安心し… 「だっ…!!」 「…え?」 突然頭に何かがぶつかってきた。痛い。 「…真ちゃん、これ…たわしだよ…?」 俺の頭に激突してきた何かを高尾が拾い上げる。 聞けばそれはたわしだと言う。 「…何故たわしが飛んでくるのだよ…。」 『あれー? もしかして真ちゃんと高尾ー?』 「…えっなまえちゃんじゃん!!」 「……………」 あ、今こめかみの辺りがピキッてなったのだよ。 「えっなんで!なんでまだいんの!つーかなんでそんなびしょ濡れなの!」 『いやね、よっちゃんとのホッケーがちょーっと盛り上がっちゃってね?』 「……………まだやってたの…!?」 おい高尾、そんなことはどうでもいいだろう。そんなことよりもっと重要なことがあるだろう。 「…おい、…このたわしは…お前が投げたのか?」 もしこいつが犯人なら、というか、十中八九こいつの仕業だ。みょうじは、涎は垂らしていなかったが、たわしは飛ばしていたのだ。 『え、投げたっていうかー…クラッシュした?みたいな?それより真ちゃん拾ってくれたんだね!ありがと!』 「……………」 こいつの脳みそは、綿あめかなんかで出来ているんじゃないか?それともババロアか? まぁどちらにせよ、こいつがフワッフワの脳みそを装備してバカみたいに笑うから、毒気を抜かれてしまった。 それによく考えたら、生憎部活後にまでこいつに付き合ってやる体力は持ち合わせていない。こいつといると、ろくなことが無い。 「おいみょうじー!おっそいぞー!って、あれ、緑間高尾?」 「あーよっちゃん!」 「…吉川もずぶ濡れ?つーか部活は?」 「いやーつい盛り上がっちゃって。うちの部今日は休みだよ。」 『どうする?今日はおひらきにする?』 「あーそうだねー。もう夜だし?」 「…二人とも…着替えちゃんとあんの?」 「私部室に部活のジャージあるー」 『私も教室にあるー』 「よしおっけ!じゃあなーみょうじ緑間高尾ー!」 『ばいばいよっちゃん!』 「また明日なー」 吉川は部室棟に去っていった。 いつも高尾とみょうじの騒音のせいで気にならなかったが、吉川も相当うるさい。 というか、高校に入学してから、俺の周りは黄瀬級にうるさいのが多すぎる。 今思えば、黒子はいい奴だったかもしれない。 「…俺も帰る。その前にみょうじ、貴様のせいで俺は今日ラッキーアイテムを肌身はなさず身につけていたにも関わらず散々だったのだよ。」 『…いやいや気のせいなのだよ?』 「いいや気のせいじゃない。」 『だってラッキーアイテム持ってたんでしょ?』 「貴様はおは朝の恩恵を持ってしても対抗しきれない、いわばアンラッキーアイテムなのだよ。ラッキーアイテムが無かったら俺は今日死んでいたに違いない。」 『んなばなな〜』 「いやなまえちゃんそれ古いって。」 「…とにかく、お前には一つ仕返しをする。」 『…仕返し?』 「…え、ちょ、真ちゃん?」 俺は高尾の首根っこを掴む。 「ちょっと待っ、真ちゃん?真ちゃあ゛あぁぁあ」 『え、ちょ、何、えあぁぁああぁぁ』 そして、そのまま高尾をみょうじに向かって投げた。 「…ふん、じゃあな。」 高尾とみょうじが仲良く潰れている姿を見て、今日初めて気分が晴れた。 他意?あるわけないだろう * * * 2012.11.07 |