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好奇心にはとりあえず従っとけ


なまえちゃんのあの表情は、無意識なんだろうか。どうして、なまえちゃんはあんな表情をしたのだろうか。彼女にあんな顔をさせたことは、俺も真ちゃんも無い。ってことは、なまえちゃんは真ちゃんのこと好きな訳じゃないのだろうか。なまえちゃんは過去にどんな恋愛をしていたのだろうか。

聞きたいことがたくさんある。知りたいことがたくさんある。
俺がこんなに調子狂わされてんのに、なまえちゃんはびっくりするぐらいいつも通りで。
もしかして、あの話も冗談…? …いやいや、嘘であんな表情作れないっしょ。


「あ゛ーーー」

「うるさいのだよ」

「だって、真ちゃんは気になんないのー?」

「は?」

「なまえちゃんのことー!」

「俺の脳にみょうじについて悩んでやるスペースなど無い」

「…へー。真ちゃんの脳って結構ちっちゃいのな。」

「違う!みょうじより他に考えることがあるだろう!」


結局、あのまま放課後になってしまっていた。なまえちゃんは、それはもう元気に水飲み場に駆けていき、俺と真ちゃんは部室に向かう。


「よぉー高尾」


部室に入ると宮地さんが待ち構えていた。


「あ、宮地さん、早いッスね?」


わっるそうな笑顔だなぁおい。


「あれ?あれあれ?」


宮地さんはわざとらしさをこれでもかってぐらい滲ませながら左手を腰に、右手を額の前にキョロキョロしだす。


「我らがエースの紐パン大先生はまだいらっしゃってねぇの?」

「…帰る」

「ぶはっ、ちょっ待っ、落ち着けって真ちゃぶっははははは!」

「おぉ!そこにいらっしゃいましたか紐パン先生!いやぁ気がつかなくて申し訳ねぇ!」

「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」

「帰る!! っ…!?」


振り返ると、真ちゃんの行く手を阻むキャプテンと木村さんがいた。


「おっ来たか二人とも」

「サボリは許さんぞ、緑間。」

「とりあえず緑間、」

「「「紐パン見せろ」」」

「……………」

「っぎゃはははははははははは!!」


朝、なまえちゃんが何気なく発した一言が一日かけて先輩たちの耳に入ったようだ。
いやぁ、噂って怖い。


「俺は!紐パンじゃありません…!!」



…あーあ、俺は何調子狂わされてんだか。こんだけ笑って、「嘘吐けちょっと脱いでみろ」と先輩たちに襲われてる真ちゃん見てると、悩んでる自分が馬鹿らしくなってきた。


−−−


「ねー真ちゃん?」

「はぁっ、はぁっ、なんだ…っ」

「…え、何真ちゃん興奮してんの」

「違う!抵抗の跡なのだよ…!!」


先輩たちは3人がかりで真ちゃんのパンツを確認し、「あれ、紐パンじゃねー」「俺らに見られないようトイレで履き替えたのか?」「おい緑間何つまんねーことしてんだよ」と好き勝手言ってから、着替えてさっさと体育館へ行ってしまった。
まぁ、先輩たちも日頃の憂さ晴らしだったんだろうな。男子高校生ってことと、緑間腹立つってことと、彼女いないってことが重なるとこうなるらしい。


「…で?何なのだよ」

「…あぁ、俺明日なまえちゃんに色々聞いてみようと思って。」

「…何故それを俺に言う。」

「えーだって相棒っしょー?だから、一応報告。」

「必要無い。」

「何だよつれねーなー」


全く、すーぐ真ちゃんはツンツンしちゃうんだから。


「とりあえず…」

「んー?」

「早いとこあのバカ引き取れ。そして俺に関わらないようキツく躾ておけ。」


そう言って真ちゃんは部室を出ていった。


…デレた。


口角が上がる。
本当、とんだツンデレだな。
…でも真ちゃん、


「…それは無理っしょ。」



好奇心にはとりあえず従っとけ
* * *
2012.11.03




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