scherzando | ナノ




たまには桃色


「ねーえ真ちゃん?」

「…なんだ、」

「真ちゃんはなまえちゃんのこと好き?」

「嫌いだ」

「……………」


…今のは俺が悪い。
真ちゃんに対して直球で聞きすぎた。


「…じゃあさ真ちゃん、好きな人とかいないの?」

「…そうだな、」


真ちゃんは腕を組み考え始めた。え、うそ、


「いんの…!?」

「…強いてあげるなら赤司だな」

「……………」

「おいなんだその目は」


…おいおいマジかこいつ。重症だよ。早くなまえちゃんにもう一回恋のバイブル借りて読ませないと。


「赤司って…男だろ…」

「当たり前なのだよ」


…いやここ威張るとこじゃねーし。


「俺が言ってんのは!女の子!好きな女の子いないのって言ってんの!」

「女?女なら年上だな。」

「………年上ぇ?マジで?」

「マジなのだよ。」

「じゃあなまえちゃんは?」

「…何故さっきからみょうじが出てくる?」

「いいから!」

「…あんな腹の立つバカこっちから願い下げだ。」

「…ふーん…」


真ちゃんは、なまえちゃんのことなんだかんだで絶対好きだ。そんなん見てりゃわかる。
けど、恋愛感情まではわかんなかった。だって真ちゃんだし。
でも、今はっきりした。
真ちゃんはなまえちゃんに恋愛感情を抱いていない。もし真ちゃんにそういう気持ちがあったとしたらきっと全面的に出るはずだからね。今真ちゃんいつも通りだったからね。


「…よかったー」

「…何をそんなににやついている、」

「だって俺、なまえちゃんのこと好きなんだもん」

「………………なっ…!!」


俺の告白の意味を少し時間をかけて理解した途端、真ちゃんが発火した。

「なんで真ちゃんが赤くなんの、」

「な、何を言っている!俺は緑間だぞ!赤くなる訳無いだろう!」

「いや、意味わかんねーし。」


じゃあお前は照れたら緑になんのか。
にしても真ちゃん、やーっぱりこういう類の話題には弱いらしい。


『なーに話してんの!』

「あ、なまえちゃんおかえりー」

『ただいまーって、ぶっは真ちゃん顔真っ赤!どうしたの!』

「ぶっは本当だ緑間顔真っ赤!クリスマスみたいじゃん!」

『本当だ頭緑で顔赤でクリスマスだ!よっちゃんナイス発想!』

「ちなみに部活のジャージはオレンジだから放課後はコイツ人参。」

『いやー真ちゃん収穫されないでー』

「いやー真ちゃん出荷されないでー」

「いやー緑間食べられないでー」

「なんなのだよ!!!!」

「大変だ緑間が怒ったー。じゃあみょうじ、放課後、」

『おっけよっちゃん!水飲み場で!』


吉川は、なまえちゃんと放課後たわしホッケー試合の約束をして去っていった。


『…で、何で真ちゃん顔赤いの?』

「誰がお前なんかに教え」

「恋バナですよなまえさん、」

『えーうっそえー!!』

「…おい高尾、」

「なんと真ちゃんの好みは、ト・シ・ウ・エ。」

『えーーー!!そーなの真ちゃん!』

「高尾っ!!」


…あ、っていうか真ちゃんがなまえちゃんに恋愛感情無いことはわかったけど…
なまえちゃんは?
あれ、これ俺まずったか?


「どうしてお前はそう…」

「別に特定の誰かじゃないんだしいーっしょ?」

「コイツは駄目なのだよ!」


話しながら、なまえちゃんの様子を伺うけど、いつもと変わらないように見える。
…まぁ、いっか。たとえなまえちゃんが真ちゃんのこと好きでも、なまえちゃんが真ちゃん落とす前に俺がなまえちゃん落とすし。


「じゃあさー真ちゃん、あの人は?誠凛の女カントクー」

「…俺は料理が出来ない。あの人は俺以上に出来ない。却下だ。」

「あー…、」


夏に見たあの赤を思い出して、俺と真ちゃんは顔を青くする。


『じゃあさー、あの人は?食堂のおばちゃん。年上だし料理出来るし、完璧じゃん。』

「却下だ。」

『えーなんでよ』

「却下だ。」

『そんなこと言ってると真ちゃんの恋人はいつまでも高尾だよー』

「なっ…!!」

「え、」


……………。


「な、何を言っているのだよ…!!」

「…なまえちゃーん…」


え、真ちゃんとなまえちゃんと俺って、今どんな関係?
図で表したらきっと矢印ぐっちゃぐちゃだよ?


『…いや、冗談だけど。』

「……………」

「……………」


…今回は俺も遊ばれた。真ちゃんの気持ちが、ちょっとだけわかった気がした。
これは心臓に悪い。


「…それより、なまえちゃんは?好きな人いないの?」

『……………』


え、うそ、あのなまえちゃんが黙ったんだけど。

…え、うそ、あのなまえちゃんが黙ったんだけど。

え、うそ、あのなまえちゃんが黙ったんだけど…!!


『…好きな人、今はいない。』

「…今は?」

『うん。前はいた。』


そう言ってなまえちゃんは、頬を薄く染めて、柔らかく、愛おしそうに笑った。
見たことない顔だった。

真ちゃんも、いつもとは少し違った表情をしたなまえちゃんに少なからず驚いたようだ。


「っ」

「はい号令ー」


とりあえず聞きたくて、どこから聞けばいいのかわかんないけど、もっと聞きたくて、声を出そうとしたところで、授業だ。
あーあ、何で授業って空気読めないんだろうな。



たまには桃色
* * *
2012.10.26




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