scherzando | ナノ




ビッグドリーマー


「みょうじテンメェェエェェェなんでそんなにたわしホッケー強いんだよ絶対ひそ練してんだろ!!!!!」

『してないのだよ。』

「真似をするなみょうじ」

「なまえちゃーん!フォーティワンの割引券手に入れた!!帰り一緒食べいこー!!」

『いくー!!あかりちゃん愛してる!!!』

「おいこら待てやみょうじテメェ英語の課題出してねーだろがボケコラカスあ゛あ゛ん!?」

『ちゃんと提出日に緑間くんに提出しました』

「されてないのだよ!?」

「おい緑間ぁ…お前の机の中にあるこれはなんだぁ…?」

「なぜみょうじの課題が俺の机の中にあるのだよ!!!先生誤解ですこんなものさっきまでありませんでした!!!!」

『緑間くん…ひどい…!!』

「そもそも俺に提出することから間違っている!!!」

「やっぱり提出されてんじゃねーか緑間ぁ…?」

「ち、違うのだよ!?みょうじは提出期限を一週間過ぎた今さっき僕に提出したにちがいな…」

「緑間ちょっくら職員室来いや」


以上、昨日のなまえちゃん付近の会話から抜粋。
…なまえちゃんは、顔が広い。そして、いい意味でもわるい意味でも人を惹きつける何かを持っている。だから毎日こんな感じで、軽い会話はいくらでもできるが聞きたいことを聞くことができない。そんな隙なんてねぇ。「明日なまえちゃんに聞いてみる」。そう緑間に告げてから何週間経っただろう。俺は一向になまえちゃんの過去の恋模様を聞けずにいた。はぁ、今日も聞けずに終わるんかな。今日は誰がなまえちゃん訪ねてくんかな。そろそろ大坪さん木村さんがなまえちゃんをたかいたかーいしに来てもおかしくない。あれをやるとなまえちゃん異様に喜ぶから。


「はぁー…」

『どうした和くん』

「うっわびっくりした!!」


なんてことを考えてガラにもなくため息なんてついちゃってたら目の前になまえちゃんの顔があった。


『元気ないじゃん金欠?』

「なまえちゃん…おはよ。」

『ん、おはよ。』

「……………。」

『どっどどっどうした高尾氏真顔で無言で見つめないでおくれよヒーハー!』

「…ねぇ、なまえちゃん。」

『…ハイ?』

「今日お昼一緒に食べね?」

『……………え』


どうせここで聞いてもすぐに刺客がやってくんだろ?知ってる。だから約束をすばやくとりつける。放課後は俺が部活だから、そうするともう昼休みしかない。


『どうしたの和くんもしかして真ちゃんに愛想尽かしちゃった?』

「そーじゃなくて…その…なまえちゃんに聞いてみたいことがある…みたいな?」

『むはははそうかそうか人生相談だね和くん!!このなまえ大先生にまかせなサーイ!!!』

「ま、そんなとこ?よろしく頼みますよ先生。」


よし!よしよし!約束とりつけたぜ俺!真ちゃん俺を褒めて!!


『ということだから真ちゃん。』

「どういうことなのだよ!?」

『チミの和成くん昼休みかりてくから。』

「別に俺の高尾じゃないのだよ。」

『ちょっと聞いた!?俺の高尾だってヒュー!』


ガターンッ!!


「なんなのだよ!!!!だいたいお前は毎度毎度…」

「毎度毎度うるさいぞ緑間ーおら席つけー」


真ちゃんはギロッとなまえちゃんを睨む。おーこわ。しかしなまえちゃんにかかれば。


『プレゼントフォーユー!』


やる気ほぼナシ担任のホームルーム中、そう小さな声でこそっと言って真ちゃんの机に何かが投げられた。ころん、と軽やかな音が小さく響く。


『乙女としてはコラーゲン入りを買うべきなんだろうけど、真ちゃんのためを思ってこっちにしたのだよ。』


今度は俺になまえちゃんの小さな声が向けられる。なまえちゃんがニッと笑って手に持っていたのは、飴玉が入ったパッケージ袋。新発売!元気が出るアメ、と印字されていて、その斜め上の吹き出しに、今度はカルシウム入りだ!!、と。前を見ると真ちゃんの刺々しいオーラはまるくなっていた。再び横を見ると無邪気に俺の方を見て笑ってるなまえちゃん。俺も自然と笑顔になった。


−−−


キーンコーンカーンコーン…


いっせいに教室中が昼休みに入った喜びでどよめく。高校生の食欲をなめちゃあいけない。毎日一限のうちにどこからともなくハラのなる音が聞こえてくる。そしてその音のなる回数は四限終了に向けてぐんぐん伸びてくる。それが俺たち高校生だ。


「なまえちゃん、」

『……………』


彼女は授業中に寝るのが超絶うまい。どう見ても授業を受けているようにしか見えない。が、基本寝てる。起きてても勉強はしてない。しかし、これは自分の腕を枕にして完全に寝てる。さっきの先生、寝てる奴注意しないからな。


「なまえちゃん、起きてー、」


彼女の肩に手をおき、体を軽くゆする。


『んー…』


もぞりと動き反応が返ってくる。


「お? 起きた?」

『……そのままじゃ…だめ、れす…。ちゃんと茹でてくらさい…。』

「ぶっはぁ!!!!」


しかし彼女は起きなかった。何か夢を見ているようだ。よくわからない寝言に思わず吹き出す。


「なまえちゃーん、起きてー、」

『ん…、いいから早く茹でて…、すけすけになるまで…茹でて…わたしがおとりになる…から…。』

「ぶふぅ!!!!やめてやめてぎゃははははは!!!!」

「うるさい高尾、早くその寝バカ連れてどっか行け」

「だって真ちゃん聞いた!?すけすけになるまで茹でなきゃいけないらしいよ!?ぷー!ぎゃははははは!!!」

『今だ…朝礼台にヨーグルトをおいてくらさーい…。』


スパァン!!!


『いっ!?』

「ひやっはっはっはっヒィーやめてしぬっ!しぬっ!ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃハラいてー!!」


なまえちゃんのキメ台詞だったっぽい寝言を聞いた瞬間、俺も真ちゃんも何かがはじけ飛んだ。俺の笑いは止まらなくなり、真ちゃんは自分が被害を被っているわけでもないのになまえちゃんをひっぱたいた。


「いつまで寝てるのだよ!!!」

『んー?あれー?二股巨大大根は?』

「ぎゃっはははははヒィー、っぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!」



ビッグドリーマー
* * *
2012.12.30




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