君が笑うと 「なまえさん次お風呂どうぞ、僕食器洗うんで。」 『え、いいよ私やるよ!』 「…僕だって食器洗うぐらい出来ますよ」 『いや、そういう意味じゃなくて…』 「ここは僕に任せて下さい」 『…じゃあ、お願いします…』 黒子の言葉に甘えて、私はシャワーを浴びさしてもらう。少し熱めのお湯が気持ちいい。…にしても黒子…なんであそこでどや顔?皿洗いによっぽど自信あんのかな? お風呂から出ると、私の荷物が無くなっていた。 『あり?』 「あぁ、なまえさんの荷物なら部屋に運んでおきましたよ」 『え!ごめんありがとう!』 「あとは歯磨いて寝るだけですね」 『…ちょっと待てぇぇい!』 「…?」 『髪!乾かしなさいって朝言ったじゃん!』 「…あぁ、すみませんお願いします」 さも当たり前かのようにドライヤーを差し出す黒子。そこは自分でやる、という選択肢無いのね…。まぁ、そういう約束で今私はここにいるんだけどさ。 『…しょうがない。私が直々に黒子くんの髪を乾かしてやろう!』 「ありがとうございます」 …なんか今日、黒子いつもより笑ってる気がする。黒子が笑うと何故か私も嬉しくなるから、黒子が笑うのはいいことだと思う。友達はみんな、黒子くんが笑ってるところなんて見たことなーい、なんて言うから勿体無い。こんなに綺麗で、幸せな気持ちになれるのに。 『熱かったら言って下さいねー』 「はい」 ちょっとふざけて、美容師さん風に言ってみる。黒子の髪は柔らかくて気持ちいい。いいなぁ、私の髪固めだからなぁ。美容室では、髪丈夫でいいですねー、とか言われるけどぶっちゃけ全然嬉しくなかったりする…って 『黒子!?』 「…! すみませんちょっとウトウトしてしまいました」 『そりゃ疲れてるんだよーもう殆ど乾いたから、歯磨いて寝ちゃいな。』 「いえ、僕もなまえさんの髪乾かします。」 『え、いいよ寝なよ!』 「…嫌ですか?」 『え、嫌じゃない!嫌じゃないけど…疲れてるんだから…』 「なまえさんが嫌じゃないなら問題ないです。僕が好きでやるんですから、なまえさんは気にしないで下さい」 『…今といい食器の時といい、黒子って変なとこで押し切るね?』 「やってもらったんですから、返すのが筋です」 …うわー黒子らしい。 「…何笑ってるんですか」 『いや、黒子らしいなーと思って。っていうか…人に髪乾かしてもらうのってすっごい気持ちいいねー!』 「でしょう?だからさっき僕もウトウトしちゃったんです」 『なるほど。』 なんだろう。美容室でやってもらうのとはまた違う。リラックスしてるからかな。 「はい、終わりましたよ。」 『ありがと。ね、明日朝練は?』 「あ、あります。」 『何時ぐらいに出る?』 「えっと、6時半ぐらいに…」 『じゃあ6時ぐらいには朝ご飯食べれるようにしとくね。お弁当もおんなじような中身になっちゃうけど…明日の夜からは!ちゃんと作るから!』 「…楽しみにしてます」 …あ、また笑った。 「じゃあ、おやすみなさい。」 『ん、おやすみ。』 黒子が譲ってくれたベッドに入ると、黒子の匂いがした。やっぱり理由は分からないけど、なんだか幸せな、満たされたような気分だ。あぁ、今日はいい夢見れそうだなぁ。 君が笑うと 私までつられて笑顔になれるよ * * * 2012.9.5 |