君からもらう 『ご飯、帰ったらすぐ作るからさ、黒子その間シャワー浴びて来ちゃいなよ』 「…?」 『いや、どうしてもお風呂に入りたいならそれでもいいけどさ、沸かしてる時間勿体なくない?今からご飯作ってお風呂沸かして〜ってやってると寝るの遅くなっちゃうよ?』 「…僕今日はなまえさんに協力して貰ってばかりですね」 『え、だって泊めて頂く身だし。…それに、』 「…それに?」 『バスケやってる黒子見てたら、なーんか、ね…』 「…?」 『ごめん私も自分で何言ってんのか分かんないわ』 黒子は部活をしてて、私は部活をしてない訳だから当然一緒に下校するのも初めて。だからっていつもと特に変わった事はないのだけれども。変わっている点を強いてあげるとするなら黒子がやや、ぐでっとなっていることくらい。そりゃあんな練習したら疲れるわ。 「…着きました。ここです。」 『おじゃましまーす』 「…いろいろ考えたんですけど、これから3日間なまえさんは僕の部屋で生活して下さい」 『うん?』 「家には来客用の部屋なんてありませんし、両親の寝室っていうのもおかしいですし。リビングだとなまえさんが着替えている時に僕が入ってしまう…なんてことになりかねません。そう考えると、僕の部屋が一番無難だと思います。」 『……………』 驚いた。黒子そんなにいろいろ考えてくれてたんだ。え、でもそれじゃあ… 『黒子はどこで寝るの?』 「僕はその辺に布団敷いて寝ます」 『え!』 「…不満でしたか?」 『いや、そうじゃなくて』 「なら決まりです。安心して下さい。僕も部屋に入る時はあると思いますけど、その時はノックしますし、入るのがまずかったら言ってくれれば待ちます。」 『…なんかすみません』 「何謝ってるんですか。それよりなまえさん、僕お腹空きました…。」 『あ…うん。…よっしゃ任せといて!家にあるもの使っちゃって大丈夫なの?』 「はい」 『じゃあ今から作るから!黒子シャワー浴びて来ちゃいなね』 「はい、お願いします。」 …黒子やべぇ。あんなに気回せる子だったなんて…。もてなしに来たつもりだったんだけど逆にもてなされた気分だわ…。…うし!じゃあ今度は私がもてなす番だな!ちゃっちゃと作りますか! …で、夜はカレーでいいとして、明日の朝どうしよう。お風呂場の扉が閉まる音を聞きつつ、悩む。黒子家って朝パン派?ご飯派?あーでも今パン無いや。じゃあ必然的にご飯として…おかず、は、どうしよう。わー自分以外に食べる人がいると結構悩むもんだなぁ。野菜は結構あったから今日はサラダも付けて…明日はご飯と味噌汁とおひたしと…メインのおかずになる物ねぇぇぇ…!!やっぱり買い物に行くべきだったよ…。 −−− 「なまえさん、夕飯出来ました?」 炊けたご飯と同じく、ほかほかの黒子がお風呂から上がったようだ。 『え、あぁ、うん…。夕飯は出来たんだけどさ、明日の朝ご飯が…』 「…あぁそれなら、ふりかけでいいんじゃないですか?」 『うっわ私ふりかけ久しぶり!』 「明日のことが解決したところで、早く食べましょう」 「いただきます」 『…どう?』 「美味しいですよ」 『ほんと? よかったー。考えごとしながら作ってたからさ、ちょっと心配だったんだよね』 「何考えてたんですか?」 『え、明日の朝のことだよ。やっぱり買い物行くべきだったかなーって。明日は行ってくるからね。』 「…やっぱりなまえさんに来てもらって正解でした」 『え?』 「家帰って一人でコンビニ弁当って生活が何日か続くと悲しくないですか?」 『めっちゃ悲しい』 「だから、こうやって作ってくれて、一緒に食べることが出来て、僕は嬉しいです」 『………私もね、普段は自分の為にしか作んないから、こうやって美味しいって食べてくれる人がいると…嬉しい』 ほかほかの黒子が、ほかほかしたことをふわりと笑いながら言うから、私もつられてほかほかふわふわな気分になった。 君からもらう 暖かい、気持ち。 * * * 2012.9.5 |