日一日君と | ナノ




そんな君の姿に




あの後すぐに担任が来てHR。数学やら生物やら、やたら眠くなる教科が多かった午前の授業も終えてお昼休み。ちらっと隣を盗み見ると案の定、黒子のお昼ご飯はコンビニで調達して来たと思われるパン1つとコーヒー牛乳だった。


『…本当にコンビニ生活するつもりだったんだね』

「僕は冗談言いません」

『うん知ってる。それより、駄目だよ黒子ー成長期の運動部男子の食事がそんな栄養もカロリーも無いようなのじゃー』

「…なまえさんのお弁当だってたいした量じゃないじゃないですか」

『私帰宅部女子だし。それに栄養はちゃんと考えてあるし』

「…………………」


黒子が少し眉を寄せて考え込むような表情をしたまま黙ってしまった。あれ?私なんかまずいこと言った?少食がコンプレックスだったとか?


『…あの、黒』

「なまえさん、もう一つお願いいいですか」

『え、何?』

「僕の分のお弁当も作ってくれませんか?明日明後日だけでいいので」

『え、』

「もちろん材料費はなまえさんの分も込みで僕が出します」

『やらせて頂きます!』

「ありがとうございます。…あの、栄養を気にするのと気にしないのとだと、結構違いますか?」

『え、全然違うよ!ちょっと運動部!』

「そうなんですか…。」

『これからはちゃんと考えなよ!体大切にしなきゃ! あ、じゃあ私友達と食べるから!また後で!』

「……………」

「……………」

「…なぁ黒子」

「…何でしょう火神くん」

「…お前ら、付き合ってたっけ?」

「…? いえ?」

「だよなぁ… え、じゃあ、え?」

「え?」

「すまん、俺に解るように今の状況説明してくれ」


−−−


「…は?」

「ですから…」

「いや、状況は解った。問題は…どうしてそうなった?」

「…成り行きです」

「どんな成り行きだよ!!…………まぁなまえと黒子だったら何も起きなそうだし? お互いメリットがあって納得してるみたいだし? いいんじゃねぇの?」

「どうして火神くんの許可が必要なんですか」

「いや別にそういう訳じゃねぇけどよ」

『2人で何いちゃいちゃしてんの』

「…!!ばっなまえっ いちゃいちゃなんかしてねぇよ!」

「そうですよなまえさん僕もっと趣味いいです」

「黒子お前他に言い方あんだろ!」

『はいはいいちゃいちゃ』

「だから…!!」

『ほらほら地獄の5限化学が始まるよ〜 あ、でも2人はどうせ寝るから関係ないか』

「なまえさんも結構寝てるじゃないですか」

『あり?ばれてた?』

「ばればれです」


それから午後の授業もまた寝て過ごした。火神だけ怒られていて。もっとひっそりと寝ればいいのに。


放課後、いつもならすたこらさっさと帰る私だが今日は違う。黒子と火神が所属する男子バスケ部に少しだけお邪魔させて貰う。なんかちょっと青春〜って感じでどきどきする。


「うわ〜みんなやっべぇよ!黒子と火神が女子連れてきたやっべぇよ!」

「え、小金井先輩違います!こいつは…」

「な、んだと… オイどっちの女だ!答えろ!!」

「キャプテン落ち着いて下さい。この人は火神くんの恋人でも僕の恋人でもありません。ただちょっと事情が…」

「あらじゃあマネージャー志望!?助かるわー人手が全然足りなくて困ってたのよ!」

『どうもはじめましてみょうじなまえです。ではさようなら』

「…待って下さい!どこ行くんですか!!」

『黒子…だって私このままだと火神の彼女か黒子の彼女かマネージャーになる道しかないみたいだからさ。私の人生もっと可能性あると思うんだよね。それを考えると…まぁ3日分の生活費ぐらい、しょうがないかなって…』

「大丈夫です僕がちゃんと説明しますから!監督聞いて下さい!ちょっと話すと長くなるんですけど…」


−−−


「…へぇ、じゃあなまえちゃん一人暮らしなんだ。大変でしょ?」

『えぇ、まぁ…』

「っていうか黒子くんの食事ぐらい私つくったのに」

「いえ、遠慮しときます。どうぞお気になさらず。」

「…そう?」

『あの、私舞台の上に黙って座ってるんでどうぞ練習して下さい』

「そうね…じゃ、練習始めましょ!」


私は宣言通り、黙って舞台に座ってバスケ部の練習風景を見ていた。
…正直、驚いた。
私は、寝てたり食べてたり口喧嘩してる彼らしか知らなかったから。特に、黒子。朝、間抜けな頭を晒していた彼が、髪から汗を滴らせてこんなに真剣な表情をしている。
あぁ、火神が言ってたな。あいつには驚かされた、って。


「…黒子って、凄いんですね」

『…なまえちゃん、黒子くんが見えるの?』

「え、見えますよ?コンタクトとっちゃうと多分見えませんけど」

『………………』


監督さんが考え込むような表情をして黙ってしまった。あれ、お昼休みにもこんなようなことあったような…


『ねぇ、なまえちゃんマネージャーになる気ない?』

「え」

『すぐに答えを出せとは言わないわ。ただちょっと、考えるだけ考えてほしいの。』

「じゃあ…考えておきます…」

『ありがと。』


そう言って監督さんはニヤリと笑った。怖いのであまり深く考えないようにしたいと思う。


「「っしたーーー!!」」


お、練習が終わったみたいだ。


『これから自主練?』

「…あの、やっぱり今日は帰りましょう。流石に退屈じゃないですか?」

『ううん、私黒子がバスケしてるの見るの好きだよ。だからさ、好きなだけ練習して…って、ああ!!』

「…どうしたんです?」

『荷物…忘れてた。これから3日泊まるんだもんね。ごめん一回私家帰る!またすぐ戻ってくるから!』

「え、あ、はい。」


私としたことが、すっかり忘れてたよ。手ぶらで人様ん家泊まれる訳ないじゃんね。
私の家は学校から結構近い。だから凄い便利。
黒子ん家はどうなんだろ?遠くはないだろうけど…


家に着いたら、早速荷造りを始める。って言っても着替え数枚と歯ブラシとコンタクトぐらいだな。シャンプーとかはかりればいいよね、うん。教科書類も全部置き勉だし。あとは携帯とか財布とか、いつもの物。は学校鞄に入っているので…わーコンパクト!荷造りって程でも無かったな。
そうだ、ブレーカーとか落としてっちゃおう。やばい今月ちょっと安くあがっちゃうよ。

急いでまた学校の体育館に向かう。黒子まだ練習してるかな…


−−−


『黒子ごめん今戻っ…』


…あぁ、やっぱり。バスケをしている黒子には、引き込まれる。どうしてだろう。普段とのギャップかな?


「あ、なまえさん」


練習の手を止めて、黒子がこっちを向く。


『……………』


あれ、今ちょっとどきっとしたような… え、早くも更年期障害?


「…なまえさん?」

『…え、あぁごめん今戻った。練習もういいの?』

「はい、もう大分遅くなっちゃいましたし。すみません僕着替えて来るんでもう少しだけ待っていて下さい」

『はいよー』


私栄養にはちゃんと気使ってるはずなのになぁ。まさかの動悸…。今までこんなことなかったのに。


「すみませんお待たせしました。」

『あれ早いね?』

「ちょっとだけ急ぎました。では、帰りましょうか。」

『うん』


あ、今心臓いつも通りだ。さっきのどきっは…勘違いかな。





そんな君の姿に
引き込まれたよ。

* * *

2012.9.4




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