日一日君と | ナノ




君の答え




今日も舞台の上に座ってバスケ部の練習を見る。


…マネージャー、


監督さんの言葉を思い出す。すると、今まであまり注意して見ていなかった、私の知らない一年生選手や先輩選手、監督さんが目に入る。そして動き回る火神と、真剣な顔をした黒子も。
あぁ、私この部好きだなぁ。みんなバスケが好きで、バスケ部が好きで、部員が好きで、真剣に向き合ってやってるっていうのがすごく伝わってくる。
私も、彼らと一緒に、真剣に向き合ってみたい。彼らが夢を叶える手伝いをしたい。


−−−


「「っしたーーー!!」」



『お疲れ黒子。自主練、私のことは気にしないで好きなだけやってね』

「…ありがとうございます。でも、退屈じゃないですか?」

『私黒子がバスケやってるの本当に好きなの。…って前に言ったことは覚えてないの?』

「…ありがとうございます」


こうやって柔らかく笑うのも、ね。


−−−


「お待たせしました。」

『うん、』

「今日は送っていきます。もうすっかり暗いですから。」

『…ありがと』

『あのね、私監督さんにマネージャーやってみないかって誘われてたの』

「え?」

『それでね、この3日間バスケ部の練習を見てきて、今日思ったんだ。私も黒子たちみたいに真剣に向き合ってみたい、黒子たちが夢を叶える手伝いがしたいって。』

「……………」

『私に出来るかな、』

「…僕、今日のお昼に言ったじゃないですか。なまえさんの料理は僕のこと考えて作ってくれてるのがわかる、って。」

『うん、』

「でも、それは料理だけじゃない。」

『?』

「なまえさんは、人のことをちゃんと見ていて、人のことをちゃんと考えている。それは、マネージャーになるにはぴったりの人材だと、僕は思います。」

『ほんと?』

「歓迎しますよ。みんなもきっと。」

『へへ、ありがと。って、私の家ここ、』

「…めっちゃ近いじゃないですか」

『そうなんだよ、便利便利。』

「僕まだなまえさんの質問に答えてません。」

『あ、そうだよ!黒子時間大丈夫?』

「はい」

『じゃ、まぁ、上がってく?』

「おじゃまします」


−−−


『うわ家久しぶり!ブレーカー落としてたんだよねー。あぁ、適当に座っててー』

「はい」

『紅茶でいい?』

「あ、はい」


紅茶の香りが部屋に広がる。


『砂糖とミルクはお好みで入れてね』

「ありがとうございます」


黒子にマネージャーの話をしてから、精神が安定してきた気がする。良かった。黒子の答えは、落ち着いた気分で聞きたかった。だから紅茶を淹れたのも、黒子の為、というよりは自分の為かもしれない。


「この家は、なまえさんの匂いがしますね」

『そりゃ私が住んでますから。』

「なんだか、落ち着きます。」

『…私もね、黒子が譲ってくれたベッドで寝る時に黒子の匂いがして…すごく落ち着いた。この布団、幸せで出来てるんじゃないか、って本気で考えたよ。』

「…なんですか、それ」

『幸せだなぁ、って思ったんだよ』

「それは、どういう意味ですか」

『え?』

「寝ることが幸せなんですか、それとも、…僕の布団に幸せを感じたんですか」

『んー…、どっちも』

「……………」

『黒子の布団で寝るのが幸せだった』


あの布団の匂いや温もりが思い出され、自然と笑顔がこぼれる。


『寝る時だけじゃないよ。一緒に登下校するのも、ご飯食べるのも、黒子が柔らかく笑うのも、バスケに真剣な黒子を見るのも。私は黒子といると幸せだなぁ、って思う。』

「なまえさん、それは…」

『…?』

「…まぁいいです。なまえさんですからね」

『どういう意味だオイ』


黒子は面食らった顔をしていたが、すぐに呆れたような、人を馬鹿にしたような顔に。腹立つなオイ。
そして今度は真剣な顔をして私の名前を呼ぶ。


「なまえさん、」

『? はい、』

「僕の答え、聞いてくれますか」

『…………うん、』





君の答え
聞かせてください

* * *

2012.9.10




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