本部から呼び出され通されたのはとある方の執務室でした
偉い方になりますとこうして1人1人別個にいただくそうです
さぞ大切な用件だろうと気を引き締めたわたくしに、彼は写真を渡してきました
写っていたのは大層可愛らしい女性です

「知り合いの娘さんなのだが嫁ぎ先がまだ決まっていなくてな」

ピン、ときました
つまるところわたくしにお見合いをしろと
しかし残念ながら心に決めた方がいますので丁重にお断りします
自分の身には過ぎた光栄だと辞退させていただきましょう

「まだ若輩者で自分のことしか考えられません。そのようなわたくしが彼女を幸せにできるとは到底…」
「フン、あの整備士にはお熱なのにか?」

思わず睨みそうになりました
表情を変えず何のことでしょうかとすっとぼけてみます
すると秘書の方が部屋に入ってきて分厚い調査書を渡し出て行きました
そこには彼女の、キロの履歴書や勤務態度の書類が膨大に書かれていました
同じものを彼も持っているようで眺めています

「21か…お前よりまだ若く未来もある。だが女1人で今を生き抜くのは大変だろうな」

この男は何て下衆野郎なんでしょうか
彼女の未来と引き換えにわたくしにお見合い、いえ結婚をしろと脅迫してくるとは
ですがこの程度で負けなどいたしません
仮にキロが仕事を辞めさせられてしまったらわたくしが養えばいい話です
クダリだって同じことを考えるでしょう

「失礼ながら彼女にお熱なのは貴方様では?」
「お前の弟ほどじゃないな。アイツは本当に面倒だ。聡いお前と違って実に稚拙で単純極まりない」
「…クダリの悪口は、」
「サブウェイマスターは1人でいい」

遠慮なく睨みつけるわたくしに下衆野郎は笑います
その言葉に全身から血の気が引きそうになりました
何せ、彼の言葉は本当だからです

わたくしとクダリがサブウェイマスターでいるのは会長様の御厚意
本部の人間の殆どは2人で務めることを反対していました
1人でも充分なものをわざわざ2人でやる意味はありません
歴代のサブウェイマスターも皆1人だったのですから当然でございます

おそらく実際はクダリの方がバトルは強いのですが、傍から見れば実力が互角に見えるわたくし達がこうして一緒にいれる理由はマルチトレインを導入したからです
これによって2人でなければいけない事実ができました
ですがそのマルチトレインは、挑戦者も2人、待機するトレーナーも2人ではいけないため人件費は嵩みますし、他に比べて乗車率は低いのです

「お前達が就任してからだいぶ経ったが、未だにこの意見も根強い。どちらか片方に絞るならほぼ満場一致でお前になるだろうな」
「そんな、わたくしは…」
「来月の会議で決まるかもしれん。さて、下がっていいぞ。週末にまた会おう」

反論の余地はございませんでした
わたくしは週末、お見合いをせざる得ないのです
そして、きっと写真の中で微笑む彼女と結婚しなければなりません

「…仕方のないことです」

そう思うしかありません
大切な弟と愛する人と、2人同時に守れるならば本望です
ええ、クダリとキロが結婚すれば問題ありません
彼女からお義兄さんと呼ばれる。それも素晴らしいことです、ええ


わたくしがこの心さえ殺してしまえば何も問題はありません













本部から呼び出され通されたのは偉い人の執務室で
ぼく達のよりすっごい立派。1人1人別々なんだって
ノボリじゃなくてぼくが呼び出されると思ってなかったから緊張してたら写真を渡された
写っていたのはドレスを着た綺麗な女性。歳はぼくと同じかちょっと上っぽい

「知り合いの娘さんなのだが嫁ぎ先がまだ決まっていなくてな」

ピン、とすぐに気付いた
つまりぼくにお見合いしろってことか
でも残念。ぼくは心に決めた人がいるから上手くお断りしよう
まだ結婚なんて考えられませんって辞退する

「ぼくノボリがいなきゃ何もできません。バトルばっかだし、結婚なんかしたらこの人が可哀相です」
「フン、あの整備士にはお熱なのにか?」

思わず睨みそうになった
口角は上げたまま何のことか分からないとすっとぼける
そしたら秘書さんが部屋に入ってきて分厚い調査書を渡していった
そこにはキロの履歴書とか仕事の様子が沢山書かれていた
同じものをアイツも持ってるみたいで眺めてる

「21か…お前よりまだ若く未来もある。だが女1人で今を生き抜くのは大変だろうな」

糞野郎がさっさとくたばれよ
キロを盾にぼくにお見合い、ううん結婚をしろって脅迫してきやがった
でもこの程度で負けてなんていられない
仮にキロが仕事を辞めさせられたらぼくが養ってあげる
ノボリだって絶対オッケーしてくれる

「資料いっぱい…彼女のこと気になるんですか?」
「お前の兄ほどじゃないな。あの堅物が面白いほどにまで惚れ込んで、見ていて笑いが止まらん。いなくなれば無表情も流石に変わるか見てみたいものだ」
「…ノボリのこと笑うなら、」
「サブウェイマスターは1人でいい」

睨みつけるぼくに向かってアイツが笑う
サッと血の気が引いていったのがわかった
だって、悔しいけどこいつの言葉は本当

ぼくとノボリがサブウェイマスターできるのは会長さんのおかげ
本部の人は皆2人でやるの嫌がってたって聞いた
1人でも充分なものをわざわざ2人でやる意味ないって
今までのサブウェイマスターは確かに1人だったから、それは間違いない

実際はノボリの方が強いけど、傍から見れば実力が互角に見えるらしいぼく達が、こうして一緒にいれるようになったのマルチトレイン導入がきっかけ
2人じゃなきゃ戦えないから2人でもいいってことになった
でもマルチトレイン挑戦者も待機するトレーナーも2人いるお金かかるしパートナーいない挑戦者はあまり来ない

「お前達が就任してからだいぶ経ったが、未だにこの意見も根強い。どちらか片方に絞るならほぼ満場一致でお前になるだろうな」
「そんな、ぼくは」
「来月の会議で決まるかもしれん。さて、下がっていいぞ。週末にまた会おう」

反論する隙なんてなかった
ぼくは週末、お見合いをしなきゃいけない
それから、微笑んでる写真の子と結婚しなきゃいけない

「…仕方ないよね」

そう思うことしかできない
ノボリとキロと、2人を守れるなんてかっこいい
そうだ、ノボリとキロが結婚したらいい
キロの家族になれるんだからすっごく嬉しい。よかった


ぼくがこの心さえ殺しちゃえば何も問題ないよ









双子なのだからきっと何一つ滞りなく理解してくれるでしょう
きっとわたくし達は今日のために2人で生まれてきたのです


ぼくであってぼくじゃない。でも1番近いから幸せ
君に逢えたこと後悔してない。ぼく達といてくれてありがとう



「「さよなら」」


1人じゃないから、だいじょう、ぶ








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