※世界は透明になりました
2012/09/18 00:20


忘れられた世界
もしかしたら今後こうなるかもなぁな話





「おや、少し外れそうですね」
『黒ボス?どないしましたん?』
「吊革が少々傾いているような…ああ、先が綻びていますね」
『そら危ないな。バトルの最中外れて吹っ飛ばされたら…』
「挑戦者、トウコ様がいらして終わりましたら点検場に戻しましょう」

了解と短く伝えられた後、扉が開きました
凛々しいお顔でトウコ様が49両目へと足を踏み入れます
ついわたくしの口角が上がりそうなのを抑えて、お決まりの台詞を唱えました
繰り返される言葉すら楽しいモノになるのは、彼女とのバトルが心躍るからでしょう
青空のように透き通った瞳が爛々と輝きます


――青空、青、蒼、あお…?


「負けたー!ノボリさんやっぱり強いですね!」
「トウコ様の実力もかなりのものでございます。是非またのご乗車を」
「はい!」

ホームに着くまでの一時も楽しいモノです
しかしあの綻びた吊革が気になって仕方ありません
あまりにも見つめていた所為かトウコ様に突っ込まれました
理由をお話すれば彼女も目を凝らします

「言われて見ればそんな気も。よく気付きますね」
「偶々でございます。しかし珍しい、いつもなら、」

いつもなら…?
そう、いつも、――が絶対に気付いて、誰がそれを気付いて?

「ノボリさん…?」

青が、いいえ、蒼でなくては
わたくしの頭に残る色は、蒼が、あ、お……





「あはははクダリボスも人の子だったんですね!」
「恋スルオトメン」
「違う!あ、ノボリ聞いて!」

執務室まで戻ってくれば何やら皆さん楽しそうで
トウコ様はダブルにもご乗車されたらしくクダリが楽しさのあまりスキップしていたとか

「トウコね、ゲンガー連れてた!すごい、じしん利かないから困る!」
「それはそれは、なかなか大変な方をお持ちで」
「ゲンガーいたずらする。赤い目でぼくをじっと、」

クダリの言葉は続きませんでした
ぽたりと涙が瞳から落ちたのです
ちゃんと顔は笑っていますのに次から次へと涙は床に跡を残します

「……あれ、ぼく、…点検場行かなきゃ」
「何か用があるんですかー?」
「ううん…ない、けど…でも行って、――にも話して」
「ボス?聞コエニクイ」



耳鳴りが、酷い世界です

「ノボリも行く…?」
「わたくしは、報告書を待たねばいけませんから」
「誰、の?」

トレインの報告書に決まっていますでしょう
そう、丁寧で細かい―――言葉が、うまく

「ボス達変なのさ」
「バトルよっぽど楽しかったんですね」
「はいはい仕事戻るで自分らー。あ、黒ボス吊革に綻びなんか無かったで?」
「綻び」
「せや、ある言うから戻したけどどこも綺麗やって」
「……」

そんなはずはないのです、が

「ノボリ」

クダリが呼びました
わたくしと、ああ、そうです。その名前です

「キロは、どこ…?」
「誰ですかそれ」
「ボスノ恋人?」
「新しいバチュルの名前かいな」
「違う、違う!キロ!なんでいないの!キロ、キロ――「クダリ!」

パニックを起こしたクダリを抱き締めます
周りの職員は皆笑っていました
わたくし達を取り囲み、ただただ仮面のように一律で

「…キロ、貴女様は」
「やだ…いやだ、消えちゃやだ…!」



思い出したばかりの彼女の顔は既に塗り替えられ、ごとりと何かが落ちてしまいました
クダリを抱き締めた腕の間が虚しいのは、きっと










新しい主人公がうまれたら今までの子は消えてしまう
BWとBW2を見てると本当にそう思います
初代のリメイクとか、クリスタルの女主人公とか

物資が豊富な世界は人も物もあっさりバイバイしちゃうから怖いですね





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