あーあ、お前ってほんと馬鹿だよなあ。そう言いながら蘭丸は私を椅子に座らせると、紺色のハイソックスを脱がせてまっかっかになった足を眺めた。生傷に生傷を重ねたようなその足に蘭丸は少し顔をしかめる。
「どうやったらこんな怪我するんだよ」
「知らない…!ただ転んだだけ」
「…お前転んだ時一回転してたらしいよ、浜野が言ってた」
「い、いっかいてん…!」
何てホラを吹き込んでくれたんだ浜野くん。そんなことあるわけないじゃないか。私は地面に前のめりに転んだわけで回転なんかするはず…あ、いやまてよ何だか一瞬だけ青空が見えた気がする。こりゃ本当に一回転してたみたいだ。うわあ私ってホントドジ。
「んじゃ消毒な」
「あ、う…ひゃ、いたっ」
「…あんま変な声出すな馬鹿」
「だって、しみ、る…!」
「そりゃあな…ん、おしまい」
消毒液で濡れた私の脛に蘭丸は大きなガーゼを貼ってくれた。さっきまで下手なホラー映画も真っ青になるくらい大惨事だった足は嘘のように白で覆われている。でもまだ痛い。うん、当たり前か。立ち上がろうとした時、ちょっと待て、と蘭丸に制止を掛けられた。素直に従いまた席に座る。すると蘭丸は私の足を手で少し浮かせてガーゼ越しに唇を寄せた。
「ら、蘭丸っ!なにして…」
「早く治るおまじない」
アクアマリンの瞳を細める蘭丸はいたずらっ子みたいに無邪気な笑顔を作った。それにまたきゅんとして、身体全身に熱が籠る。蘭丸の唇が触れたところが、熱くて、甘く痺れている。ああもう心臓に悪すぎて治るもんも治んないじゃない。