涙に数パーセント含まれた真実


「…!」
「囲まれた!」

天馬の周り全てに騎士団が立つ。さすがにこれはかわしきれない。彼は立ち止まってしまっている。そんな天馬の前に、剣城が一歩出る。そして――異常なほどの気迫を放った。それは暗黒色を帯び、みるみるうちに彼の後方に大きく燃えるように広がった。その影はやがて一つの形になり、現れたのは中世ヨーロッパに登場するかのような巨大な騎士だった。

「これが俺の化身――剣聖ランスロット」

その瞬間、雷門側に驚きと動揺が走った。――化身。サッカープレイヤーが放つ気の塊であり、それを持つ者はごく少数とされている都市伝説であり、本来在る筈のないものだった。
しかしその「都市伝説」が現に目の前に現れている。

剣城の背に佇むそれはベンチにいても分かるほどの強い力と圧力を放っていた。
剣城のシュートが放たれると、化身の力が加わり、何倍ものパワーとなって天馬に撃たれた。

「うわあっ!」
「松風!」

天馬は強い力で地面に叩きつけられ、そこに神童が駆け寄り、抱き起こした。

「――……!」
「…――…」
「――!…」

ベンチからは彼らが何話してるのか全く聞こえないが、ただ、神童が涙を流しているのをるちの目はしっかりと捉えた。

神童とは会えばいつも喧嘩ばかりで、考えも何もかも正反対だったが、今彼は悔しくて悲しい。二人が抱く気持ちは同一のものだった。
ベンチで見守ることしか出来ない自分が本当に憎い。るちは歯を噛み締める。

刹那、彼の背に紫色の陰が集まった。先程の剣城と同じ、同じ陰。それは神童の昂る気持ちと比例し、大きく膨らんでゆく。燃え上がる影は形を造り出し、大きな人型を模した。

「神童くんも化身を…!」

四本の腕、指揮棒。指揮者を思わせるような化身が神童の背に発現した。


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