僕らの黄金の冠


天馬をゴールキーパーに起用して後半が始まる。雷門のパスは良好でよく繋がり、連携を保てていたが、相手のキャプテン・浪川の化身「海王ポセイドン」によりボールを奪取されてしまう。シードの代名詞ともいえる強力な化身の登場にフィールド内は緊張が走った。
浪川は雷門の選手を次々とかわし、ゴールへと乗り込んでくる。そしてシュートを決めようと勢いよく足を振り上げた。
天馬に一層緊張が押し寄せた。ここを破られては雷門と海王の点差は広がるばかりだ。
――決めてやる!

俺が雷門のゴールを守るんだ。

放たれた強力なシュートを天馬は受け止めようと身を構える。その時、彼の背に青紫の気が集中しはじめたのを、雷門の人間は見逃さなかった。

「あれは…」
「――化身!」

雄叫びと連れ立って赤い翼が闇の中から飛び出した。逞しい腕に黄金の腕輪が宿り、男性の形をした化身が天馬の背に現れる。

「魔人ペガサス!」

天馬の化身――魔人ペガサスは強い咆哮と共に浪川のシュートをその手に収めてみせた。

「――天馬はボールを真正面から受けて気を膨らませることを経験する必要があったんだ」

活気湧くフィールドに目をやりながら円堂は言った。
ゴールキーパーは陣地の守りだけではなく、相手からボールを奪い合う他のポジションでは経験出来ないボールの受け方をする、すなわち真正面からボールを受けるのだ。ミッドフィルダーの天馬はこれまで正面からの経験が少なかった。化身を使うには前に気を送る必要があるという。
ゴールキーパーを経験させて、意識を前に出すことを試合の中で学び、そして彼はそれを見事掴んだということだ。なるほど、とるちは頷いた。

天馬が化身を掴んだことでゴールキーパーは三国へと戻る。
そして試合再開。天馬の化身開花にますます活気付いた雷門は怒涛の攻めを見せる。神童は「プレストターン」で相手を抜き去り、得意の必殺技「フォルテシモ」で海王のゴールを破った。
攻撃はまだまだ止まらない。次にパスが繋がれたのは剣城。果敢に挑む海王陣を振り払って、空中へ飛ぶ。オーバーヘッドからのシュートもまた海王のゴールキーパーの化身を貫いた。

「あ、あと一点で、全国…!」
「みんな、頑張って!」

デジタルパネルの表示に茜の胸が緊張と興奮で高鳴る。葵はすかさず盛り上がるフィールドに声援を送り、水鳥も高揚気味だ。

「すごい…こんな、すごい試合が…」

こんな心躍る試合が、この目で見れるなんて!るちの中で稲妻が走る。どうしても、この煮えたぎる昂りを抑えられなかった。

ボールは信介に渡る。彼は持ち前のジャンプ力で空中へ飛び、そして小さな足で力一杯シュートを決め込んだ。

「いっけえー!!」

マネージャーたちは声を合わせて叫ぶ。
信介の必殺技「ぶっとびジャンプ」が海王のゴールを勢い良く貫いた。

『ここで、試合終了!全国大会に駒を進めるのは――雷門中だー!!』

実況の声と共にスタジアムは一気に歓声に包まれた。波のように揺れる人の声が試合の熱を物語っている。るちは葵、茜と抱き合い、水鳥の腕に首を巻かれる。

「みんなすごい!すごいよ!」

フィールドで仲間と肩を組み、勝利の美酒に酔う選手達をるちをはじめマネージャーたちは嬉々とした笑みで迎える。
中でも、一番勝利に貢献したのは化身を発動させた天馬だ。皆、天馬の元に駆け寄って笑顔を向け、嬉しさを分かち合った。
歓声は一向に止まない。雷門へ祝いの言葉を向ける声が波となって鼓膜を揺らす。まるで、これから本当のサッカーを取り戻す本当の戦いに乗り出す雷門の背を後押ししているみたいで、何よりも心強かった。

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