三番ゲートを潜れば其処はサンヨウとはまた違った雰囲気の町が広がっていた。
――シッポウシティ。
決して活気溢れているとはいえないが、都会の忙しなさが感じられず、穏やかでゆったりとした空気がこの町全体を包み込んでいた。
ベルは情報誌に掲載されていたシッポウの洒落たカフェに足を運びたいとのことでメルカとは別の道を行くこととなった。やっぱベルちゃんに着いて行けば良かったかしら、縛りが無くなり、自由で心地良い気持ちであるもの、目的も無く町を彷徨くのも何だか勿体ないとメルカは感じていた。せっかく訪れたのだ、町の見所的な場所に行くべきである。ふらふらとさ迷っていた足を止め、視線を上げると石灰で出来た大きな建物が目前にずんと構えていた。
「博物館…?」
イッシュの遺跡で発掘されたものを沢山展示しているとある。シッポウシティは考古学で有名な町らしい。考古学を研究する師への土産話にしよう、とメルカは足を踏み入れた。
展示場に充てられた部屋には化石や骨や古代の壁画など、沢山の展示物が置かれていた。その中でもメルカが目を引いたのは中央に置かれた巨大なドラゴンの全身骨格である。外国のポケモンと表記されてあるそれは見れば見るほど圧倒され、今にも動き出しそうな迫力がある。
「ガブリアスの骨だったりしてね」
「フカ!?」
ほんの冗談で言ったつもりがフカマルにはショッキングだったらしく、メルカの肩を飛び降り博物館の奥へ逃げていった。少し怖がらせてしまったらしい、まだ子供だもの、仕方ない。メルカはフカマルの名を呼びながら奥へ奥へ足を進める。あ、いたいた。と、とある展示物の前でメルカはフカマルを抱き上げた。ふと目前の展示物に目をやる。――艶めく黒の珠。どうやら歴史に関わった何か、という訳では無く発掘の際偶然見つけた石らしい。息を飲むほど、美しい。メルカもフカマルもその石に魅力された。見つめるその一瞬、不思議な雰囲気を纏うそれが、自ら煌めいた気がした。
prev next
《top