短編 | ナノ
初めて会ったのはツナ君との戦いが終わった後だった。
いつものようにいじめられて、偶々教室で破れた制服を直していた時。
ガラリと響く音の先に彼女はいた。

「あれ?古里くん」

驚いたように僕を見る大きな瞳、それに申し訳ないような気分になり、僕は急いで片付けると鞄を持って教室を出ようとした。
でも、不器用なせいできちんと縫えていなかったズボンに引っかかり転ぶ。
彼女は慌てて僕に歩み寄ると、綺麗に笑った。その笑顔で心臓が速くなる。

「古里くん不器用なんだね」
「うん……」
「少しだけ、じっとしててね」

そう言うと彼女は細く長い指で僕の足に触った。
アーデルハイト以外の女の子にこんなことされるのは初めてで顔に熱が集まる。不自然にドキドキと鳴る心臓に動くことが出来なかった。

「古里くんと話してみたかったんだ」

悪戯に笑う彼女に目を奪われた気がした。
こんなにも表情豊かで、そんな彼女に心が奪われていくのがわかった。途端に恥ずかしくて顔を伏せる。

「……あの」
「はい、出来たよ」

話しかけようとすれば離れてしまう。
さっきまで触られていた所に熱が集中する。
動けない僕に手を振って彼女は教室から出て行った。


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