短編 | ナノ 「やぁ、久しぶりだね」

目の前の男の人はそう言っては私を抱きしめた。
この人が誰なのか私は知らない。だけど、この人は私のことを知っている。混乱する頭を必死に整理する。

私はさっきまで綱吉達と歩いていたはず……そうだ、学校の帰りに偶然彼達に会って一緒に帰ろうということになった。
バカみたいにみんなで騒いで帰っていた。そして綱吉の家の前まで来たときに、リボーンとランボが出てきて、出てきて何が起こったんだっけ?

頭を抱えてその時のことを思い出す。そんな私を優しく見つめる男の人は何故か嬉しそうに笑っている。

「ねぇ、なまえ」
「……なんですか」
「今の僕は君より年上なんだね」

この人は突然、何を言い出すのか。自然と男の人を睨みつけてしまう。
そういえば、外にいたはずなのに私は今、和室にいる。移動したということは、もしかして、と嫌な予感が頭をよぎった。

「ここって!」

十年後?
そう思うと納得してしまう。
目の前の人が誰かわからないけれど、この人が私を知っている理由、それはいつか私が出会う人ということ。外から室内に移動しているというのも十年バズーカのせいで、ため息が出た。

でも、ここが十年後だとわかって安心する。
あと何分かすれば私は元の場所に戻れるのだから、それまで大人しくしよう。そう思った。

「なまえ」

そういえば男性に抱きしめられていたのだと思い出す。抱きしめるということはこの人は未来の恋人なのだろうか?
いや、深く詮索するのは未来に影響が出てしまう。
とりあえず、私は男の人に離してくれるように頼んだ。


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