短編 | ナノ なまえが家から出て、並中へと歩いていく。その姿を僕はずっと見ていた。
なまえが並中にいたこと、3年連続で風紀委員だったこと、そして今は教師だということ。君の全てを知っている。

「みんな、おはよう!」
「先生おはよー」

校門に近付くなまえの周りには生徒が群がる。
本当、咬み殺したくなるよ。なまえ以外の草食動物を二度と姿なんか見えないように消してしまいたい。

僕は息を吐いてから、なまえにゆっくりと歩み寄った。
後ろから、そっと彼女の細く柔らかそうな腰を抱きしめてしまおうかと思った時。

「雲雀くん、おはよう」

なまえは僕のほうを振り向いて挨拶した。
昔から変わらない、綺麗で眩しい純粋そのものの笑顔で僕を見てくれた。それがどれだけ嬉しくて、どれだけ憎いかわからずになまえは笑う。

「……うん」
「大丈夫?」
「別に、なんともない」

苛立ちを込めて拳を握り、歯をくいしばって僕はなまえから離れた。
彼女は僕のことなんか覚えていない、こんなに僕がなまえを愛しているというのも忘れてるんだ。


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テーマ「人外ファンタジー」
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