短編 | ナノ 少し前、応接室の窓から見える桜に寄りかかる草食動物を見た。
授業中なのに堂々と寝ているのに、何故か咬み殺そうとは思わなかった。
あれから暇があれば窓を覗くが、それでも草食動物は現れない。
「草壁」
近くにいた副委員長の草壁に命令するとすぐに探しに行った。
僕が草食動物を気にするなんて有り得ない。それでも、君に会いたいと思った。
「委員長!」
しばらくすると草壁は戻ってきた。そして、その手には書類。
「おそらく彼女で合ってるかと思います!」
「ふーん」
書類には名前と丁寧に写真まで付いている。
みょうじ なまえ。
確かにあの日見た草食動物に似ている。
僕は紙に書いてある教室へとゆっくり向かった。
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