短編 | ナノ 廊下を走る音。
毎日と聞こえるせいかもう慣れてきてしまった。あと三秒で今度はドアが鳴る。
「……また君か」
ドアから少しだけ覗かれた顔は見知っていて、僕はわざとらしくため息を吐く。
そんなのを気にしていないのか彼女、みょうじ なまえは無邪気に笑った。
「また来てしまいました」
もう何度も咬み殺したのに、それでも彼女の驚異的な回復力で翌日には僕の前に現れる。
特殊なみょうじに少しだけ興味を持ってしまったのが間違いだった。それ以来いつも僕のところに来るようになってしまった。
「邪魔だから来ないでよ」
「邪魔しないですよー」
もうすでに邪魔なんだけど……と思ったけど言うのはやめとこう。
なんだかんだでみょうじがいると退屈はしないですむ。そんな一言で来なくなられるのは不快だしね。