短編 | ナノ *こちら、ちょこっとだけ大人向け表現になっています。
忘れられなかった。
なまえを抱いた時のことを思い出しては膨れていく気持ちに舌打ちをする。
そこら辺にいる部下と変わらなかった。なんとも思っていなかった。
思っていなかったはずなのに、傷付いたなまえを見た瞬間に感情が高揚した僕がいる。
「雲雀さん、どうかなさいましたか?」
たまたま人がいないから外回りに行かせただけなのに、帰ってきたなまえは口から血を流し、所々に痣があった。
目には涙を溜めていたのに、泣いた跡なんかなくて、その姿に魅せられてしまった。
他人がボロボロになっている所なんて見慣れていたはずなのに、初めて興奮した。
どうして興奮したのかなんてわからない、ただ傷付いたなまえをもっと傷付けたいと思った僕がいたのも事実だ。
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