短編 | ナノ
「……あ」

みょうじさんが僕を見る。
昨日とは違って小さく手を振ってくれた彼女に顔が赤くなる。それを隠すように下を向いてツナ君のほうに戻った。

「大丈夫?エンマ」

息が切れている僕を心配してくれているみたいで、なんとか頷く。
顔が熱い、胸が痛く感じる、息苦しい、こんな気持ち初めてだ。そんな僕に影が重なった。

上を向くと笑顔のみょうじさんがいて、目眩がしそうになる。

「古里くん、おはよう」
「え、あ……おは、よう」

上擦った声に涙が出るほど情けなくなった。
みょうじさんは気にしてないのか小首を傾げて僕を心配してくれる。
時間が、止まればいいのになんて、あり得ないこと考えた。

そんな僕を気遣ってかツナ君はみょうじさんに話しかける。
二人が仲良さそうに話しているのを見て、ツナ君に少しだけ嫉妬、そしてまた自己嫌悪。

「今日一緒にお昼食べよう」

僕に向けられた言葉。
意味を理解するのにちょっと時間がかかったけど、僕に言っているのだとわかるとみるみるうちに顔が赤くなるのがわかる。


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