短編 | ナノ 次の日、僕は昨日のことをツナ君に話した。
「それってみょうじじゃない?」
すぐに名前が出てきたツナ君に目を見開く。どうしよう、言ったほうがいいのかな?
いや、首を振ってまたツナ君を見ると複雑そうに頬をかいていた。
「どうかした?」
「いや、もしみょうじなら……ううん、なんでもない!」
慌てるツナ君に疑問符を浮かべるけど、彼女のことがわかって少し嬉しかった。
みょうじさん、なんだか彼女に近付けたように感じた。
そんな僕にツナ君が困っていたのには気付かないふりをする。
「みょうじさんってどこの教室なの?」
その問いに今度はツナ君が目を見開く。
そして、眉を下げて笑った。
「同じクラスだよ、ほら」
ツナ君の指す方には一人、机に頬をついて寝ている女の子がいる。
少しだけ近付くと、彼女は起き上がった。その横顔は正しく探していた昨日の彼女で、僕は速くなる心臓のある左胸を無意識に掴んだ。
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