短編 | ナノ 離れた体にホッと息をつく。
そして、彼の顔を見た。無造作な黒い短髪、切れ長の瞳、イケメンだな。なんて笑ってしまう。もしかしたら私の恋人なのに。

「あなたの」

言いかけて迷う。
もしも、ここで名前や恋人なのかを聞いてしまったなら、元の場所で会ったときに意識してしまうだろう。そして、未来が変わってしまうかもしれない。
うーん、と唸る私の頭を優しい手つきで撫でる男性。

「僕より年下の君もいいけど、そろそろ時間だよ」

そう言って時計を指差す。
彼は全て知っているんだ。私がこの時代の人間じゃないことも、私の全てを知っている。

「あの!」
「僕が誰か、すぐにわかるよ」

私の言いかけていた言葉すらもわかっていたらしい。
目を細めて笑う彼に、心臓がドクドクと脈打つのを感じた。

「好きだよ、過去も未来も」




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