短編 | ナノ 雲雀の一言に食べていた手を止める。
彼のほうを向くと、手が私の口まで伸びてきた。
「ついてる」
私の口元を指で拭く雲雀。顔が熱くなっていくのがわかる。
雲雀は指についたチョコレートを舐めると、ニヤリと口角を上げた。
「な、んで……」
疑問を口にして、戸惑う私を見ている雲雀は楽しそうにしている。
熱い顔を隠すことも出来ないほどに私の頭は働いていない。
「今日は白い日だって言ったよ」
「……そうじゃなくて!」
「なまえからのチョコ、嬉しかった」
聞いていることとは違うことを話す雲雀。
チョコ?なんの話だろうか。私は雲雀にチョコを渡していない、むしろ今貰った側だ。必死に考える。
白い日、チョコレート。
「だから、僕もなまえの気持ちに応えたんだよ」
私の気持ち。
全てが線で繋がる。そうだ、私は先月雲雀にチョコレートを渡した。
そして一ヶ月経った今日、雲雀からチョコレートを貰った。つまり、これはバレンタインのお返しということだ。
「雲雀、もしかして」
私の気持ちに応えてくれたということは、雲雀もそうだと思っていいんだよね。そう言えば彼はまた嬉しそうに笑ってくれた。
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