短編 | ナノ
思いっきり笑ってすっきりした私は靴を履き替えて外に出る。
明日、もしも雲雀さんに会ったら咬み殺されるのかな。
「……」
冷静に考えてみると少し怖いような、やっぱり怖くないような変な気がした。
「まだいたんだ」
校門に行く途中で後ろから誰かに話しかけられた。
ゆっくりと振り向くとそこには雲雀さんがいて、
「ねぇ」
綺麗に笑うと私を呼んだ。
「みょうじ なまえ」
少しずつ近付いてくる。
「あ、は、い……」
それに合わせて何故か私も一歩ずつ後ずさってしまう。
「キミは、」
歩幅のせいか、もう手の届く所に雲雀さんは来た。
どこか楽しそうな顔をしている。
「咬み殺されたいの?」
トンファーを出すと一気に私に近付く。
それにびっくりして尻餅をついてしまった私を見下ろす雲雀さん。
「それとも、僕に好きになってほしいのかい?」
振り上げられるトンファーに目を瞑った。けど、痛みは来なくてちょっとだけ目を開ける。
雲雀さんはトンファーを持ったまま笑っていて、頭にはてなが浮かぶ。
「あの……」
「いいよ」
「え、」
何に対しての「いいよ」なのかわからず混乱する私を置いて、一人満足気にする雲雀さんは何を考えているんだろう。
「僕を惚れさせることが出来たら考えてあげる」
それだけを言って、校舎へと戻って行った。
ただ、その場で呆然としか出来ない今の私は、きっと夕陽と同じくらい顔が赤いかもしれない。
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