短編 | ナノ 「それ返してほしいのな」
「やだ」
雲雀さんは袋をポケットに入れると踵を返してしまった。
チョコレート、溶けちゃわないかな?そんなことを呑気に考えている私自身に少し笑ってしまえる。
「なまえ」
突然、肩を掴まれたかと思えば山本の顔がすぐ近くにあった。
でも、山本よりも山本の後ろに少しだけ見える雲雀さんの後ろ姿に目がいってしまう私は、重症かもしれない。
山本にはあらかじめ用意していた少し小さめの袋を渡す。
彼は嫌な顔をせずに優しく笑ってお礼を言ってくれた。
本命は、形は違うけれど想い人に届いたから、まぁ、良しとなる……かな?
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