短編 | ナノ 今、名前で呼ばれたような気がした。
雲雀さんは私のほうを見ていて、顔には出さないが心配してくれているらしい、そんな感じがする。
「大丈夫かい?」
頷く。
それに雲雀さんは納得がいかないようで、私のおでこに手を当てた。
「熱はないみたい」
「ありがとうございます?」
おでこにある手を離そうとしない雲雀さん。そんな彼に首をかしげる。
すると、雲雀さんに押された。
「あ、」
カランと箸とお弁当が屋上にばら撒かれる。
目の前には雲雀さんと青空。なんだこの、少女漫画のような展開は。意外と冷静な自分に驚いた。
「僕以外のこと考えるなんて」
「違います、よ」
「じゃあ誰のこと考えてたの?」
獲物を見つけた肉食獣のように光る目を、なんとなく見つめる。
「あなたのことですよ」
そう言えば、彼は口をニヤリと歪めた。
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